遠い自演に思いをはせる

マーラー同時代の良きライバルだったリヒャルトシュトラウスは長生きできたからか沢山の録音を残してくれたみたいですね。
いくつかCDをかって聴いてみましたが、意外と普通というか、今風のどこにも違和感のない演奏だったような印象があります。
ブラームスや、いろんな人間にすごい指揮者がいるといわせたマーラーの演奏を聴いてみたかったと誰もが思うでしょう。
でもないんだから仕方がないですね。
ピアノロールを残したというのは有名ですが、これもいろいろ考えさせられます。


5番の1楽章・・
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いろいろ調べてみると、まずピアノロールというものが
そもそもどれだけ正確に記録できたのか?
どれだけの再現性があるのか?
という問題があるみたいですが、それどころか
ロールの穴を加工、編集して、実際以上に音数を増やしたり、間違いを修正したり、実際引いたテンポよりずっと早く再生されるように加工して販売する・・という事が普通に行われていたんだそうです。
今から見ると不正、インチキという考え方をしてしまいそうですが、時代や状況が変わるとそういうもののとらえ方も変わりますので批判しても仕方がないでしょう。
マーラー自身はなんだっけリスト直系の・・ヴィルトーゾ系ピアニストでもあったらしいですね。
それを前面に打ち出したような曲を残していないところがかえって面白いですか・・
指揮活動を縮小して作曲に専念しようと考えていたらしいですが・・・実現していれば何か聴けたのかな・・不毛だけど
結構有名になってからのコンサートで何曲かピアノを弾いてた記録も見たような・・
ショパンのスケルツォ第2番があったと思う。
言いたいことは、テクニックごまかさなきゃならなかった系の話はここに持ってこなくてもいいんだと思います。
ただ再現性がパーフェクトだって、誰も保証できないんですよね?

仮に、マーラーのこれらにはそういった問題が全くなかったとして・・・
そもそも同じ曲、音楽であったとしても大オーケーストラが大ホールで演奏するのと、ピアノを小部屋で演奏するのではベストなテンポ、その他が待ったく違うと思うんです。(もちろん一致することもあるでしょう)
マーラーはピアノで演奏せる際はピアノで聴いてよく聞こえるように弾いたはずです。
なにでこれを聴いてマーラーの指揮のテンポを論ずるのは危険というか的外れになってしまう可能性もあると思います・・

これじゃ文句ばっかりでじゃあ聞くなよみたいですね。
そりゃぁ、聴くにきまってるじゃないですかこんな面白いもの。

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1楽章の中間で大荒れになる部分がありますが、一本のトランペットのファンファーレをかき消すように始まります。
これ聴いてると左手で低いDesも弾いてるんですよね。
これ面白いですよね・・

オケ曲をピアノで弾くとき、オケの音楽をそのままピアノで鳴らそうというのと、ピアノで聴いていい音楽に聞こえるように弾こうという2種類のやり方があると思う・・
マーラーはどちらでしょうか・・・
トレモロ多用は前者の典型ですが、後者的な感覚もあると思う・・
あそこで低いDesを鳴らしているからといって、オケでも鳴らすかというとそんなことなないんでしょう。
今弾いてるここで鳴った方がいいから・・・

自分の曲だし、オペラの監督だからオケ音楽をピアノで弾くのは日常茶飯事なんでしょう・・
これやるために楽譜作ったりしたのかなぁ・・
その楽譜みられるのかなぁ・・
オケのスコアが頭に入ってるとピアノで弾けたりするのかなぁ・・
1905年だから最新作かな・・
元々ピアノで弾いて作曲したんだもんなぁ・・


その先の・・
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木管とヴィオラなんかが歌う旋律はもう捨てていて、荒れ狂うヴァイオリンをやりだすんですが、ここ2つのヴァイオリンパートは同じ音なんですね。ピアノオクターブですごいスピードで暴れだしています・・
ここだけテンポアップしているんだけど、これ生のテンポなのかな・・
これ何気なく聞いちゃうけど結構すごいんじゃないのかなぁ・・

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違う人の2手編曲・・はもっとシンプル。
この編曲者はピアノロール聴いたのかな?マーラーはこの楽譜よりもっと音を拾って弾いているようにも聞こえます。

話が中途半端で終わっちゃいそうですが、いろいろ興味深いですね・・
後半の木管が歌いだすところでハッとさせられるんですが、それが実際の演奏によるものなのか、ピアノロールというものの特性でそう聞こえてしまってるだけなのか・・

マーラー以外の曲でもいいのでもう少し何か残してほしかった気もします。
これを録ったのが1905年なら時間は何年かあったはず。
面白いと思たらもう少し何か残そうとしてくれたのでは・・

ただ、これを作ったその場にはマーラーがいてピアノを弾いたことは嘘じゃないんだから・・ちょっとだけマーラーに会えたような気がして感慨深いです。


改訂が面白い。

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マーラーの交響曲第5番
外面的にはベートーベンの5番みたいな苦悩から勝利へという形になっています。
よくそんな解説を読みます。妻のアルマさんの話もやたらに出てきます。
そういう方向で聴いてもどこまでも掘り下げられるんだと思うんですが、自分はこの曲そういうものの露骨なパロディーじゃないかと思ったりするんですよね。
その設定を利用しつつ「卓越した作曲技法による超絶技巧オーケストラ音楽を高機能オーケストラとすごい指揮者の演奏でお楽しみください。」
みたいな側面を強く持った曲だと感じています。
これをさらに進めてユニークで実験的な作曲を推し進めてるのが7番だと思うんですよね。
あれも変に苦悩や涙論で聴こうとするから訳が分からなく聴こえて駄作だとか言っちゃう人がいたということじゃないのかなぁ・・
もう100年たってるんだし・・まぁいいか・・


この曲は楽譜に新旧版があって・というのが比較的認知されているみたいでよく書いてありますね。
この盤は旧版、この盤は新版みたいなのとか・・
ネットに量版ともあったから思いつくところで1楽章のなんか衝撃的に騒ぎだしたあたりをとりあえず・・

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旧版


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新版 追加の注意書きはヴァイオリンにできる限り厳しく・・

マーラーの改訂の特徴は音楽というか言いたい伝えたいこと自体は変わっていなくて、それが聴き手にはっきりと伝わるかというところに主眼が置かれていというる事だと思うんですよね。
作曲自体には迷いがない。
これも演奏してみた結果のフォローでしょう?
厚すぎる中低音を減らして、刺さるようなフレーズを強化・・より劇的に・・
細かいダイナミクスの指示変更なんかは練習中に指揮者がいうことみたいじゃないですか?
こうやって音楽つくて行くんでしょう・・
プロだともう指揮者の手とか顔の表情なんかで一発で変わっていったりするんでしょう?
しらないけど。

こういうのがいろんなページに沢山あるんでしょうね。
昔本の中で朝比奈隆がこういうのは演奏家側に任せてくれりゃいいのに・・みたいな事をいってた。
演奏家的にはあんまりごちゃごちゃ指定されると自分たちが信用されていないのかと思うんだそうで・・

でも全部指定して細かいところまで自分の思いどおりにしたかったのかというとそうでもない、テンポかなんか細かく書いたらその通りにしようとした指揮者がいてうざりしてたってのもありますよね。

誰が言ったんだっけ、マーラーを慕う若手指揮者たちが自演の練習を聴きに来ていた。
「そこは2本で・・そこは○○を重ねて・・」とやっていたマーラーが振り返って「もし私の曲を演奏して少しでも響かないところがあったら、同じように手を入れてくれ。君たちにはその権利があるだけではなく、義務がある」と言ったそうです。
伝承はみんな話半分で読んどかないと怪しいと思いますがこの話はマーラーの考え方がよくわかってとても面白いと思います。



この悲痛な悲鳴のような騒ぎが終わったところ・・・
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昨年、アラン・ギルバート指揮、都響のこの曲を聴きに行ったのですが、
全楽器の音が消えるこの休符をかなり強調、というか長めにとっていました。
打ちのめされてもうボロボロに壊れちゃった・・バラバラに砕けちゃってます・・・みたいな
聴きながらへー面白いななんて思った・面白がる音楽じゃないんですが・・
実演っていいですよね目の前で何が出てくるかわからないという・・

生まれてゆく・・・・マラ5 アダージェット

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マラ5のAdagiettoの自筆譜があったので・・

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最初の歌いだしと・・

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後半第2ヴァイオリンで再現される部分

二言目の旋律が今と逆ですよね・・・
2回目は念を押すように上から・・という事だったのか・・
これ今のほうが圧倒的に良いですよね・・・
マーラーもこうやって音楽を作っていったんだなぁ・・と思うと感動します。



映画に使われたりして大変有名ですが不思議な魅力をもった曲ですね。
マーラーでも出来たときに自分で感動してしまったりするのかな?
いける!なんて思ったりとか・・
妻を描いたと言われたりしますがそこあんまりとらわれなくていい気がするんですよね。
マーラーが指揮者としてロシアに遠征したとき自作の5番交響曲を振ったらしいです。
それをラフマニノフが聴いていて感銘御受けた・・みたいなのを読んだことがあった気がします。
マーラーはどんな演奏をしたんでしょうか。
聴いてみたかった。

マーラー アダージェットのヴァイオリン詳細

前のマラ4のヴァイオリンの項でアダージェットのあの景色・・と書いたのでその景色を

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大変有名な曲のものすごい部分ですよね。
知人がよく人の(もちろん私でなく)演奏を評して「エロい」っていうんですよね・・
私にとって最もエロい音楽の一つがこの音楽のこの場面です。
基本的には第1、第2ヴァイオリンがオクターブで動いていますが、これも微妙に違う。
エロの秘密を見た。
サロンミュージックみたいにも聞こえますが、やっぱりこれもガン見して聴く音楽だと思います。
よくBGMになっちゃってますけどね・・・

あとここのスコアなんでこんなに詰めて書いてあるんだ思うんですけど、(記憶違いでなければ)どこかの写譜屋さんが「あれは音楽的な流れを切らないようにするため、苦労して詰めているんだ」と書いているのを見た気がします。
本当なら感動的。