第1印象が肝心だっていうもんね

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グスタフちゃん。この頃軍隊ラッパが刷り込まれたのかな・・・

マーラーの交響曲第1番巨人の最初のページです。
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霧の立ち込める朝・・・弦楽器がフラジオレットでのAの伸ばしで、いきなり鷲掴みです。
第2ヴァイオリンとチェロの第1グループは序奏の序奏みたいな最初の2小節だけやって消えます。
一見、pppで始まるように見えますが、消える第2ヴァイオリンはppです。
木管がカッコウの主題を予告するので、伸ばしは落とす・・ということなんでしょうけど、消えた感がある程度はっきりわかると面白いかなぁ。

その下で同じようにやっている第1チェロはしかしpppです。
第2ヴァイオリンのppにはないsempreという表記が第1チェロのpppにはあります。
印刷譜の初期段階では第1チェロもずっと伸ばしていたのを、後から2小節+1で止めるように変更したのかなと想像してみたり・・
スケルツォのティンパニもそのときに?
ついでに上の予告音型もみんなppなのにフルートだけpだったりして、音色への配慮というかこだわりというか・・・細かいですね。

最下段のコントラバス第3グループはフラジオじゃなくてppですが、欄外に“この最も低いppのaは非常にはっきりと聞き取れること“という指示があります。この音で空間感みたいなものが認識されるような気がします。上の音は霧とか空気ですが、このppのAは大地というか・・・固定されていて微動だにしないもの・・
7小節目にsempre pppとありますが、ここから先はpppにしろということではなくて、ほかのパートと同じように旋律が履いてきても同じ状態を維持しているようにという指示ですよね・・えっ?ちがう?

いつか別途書こうと思いますが、私はベートーベンの交響曲第4番を初めて聴くより先にこの曲を知りました。
なので順序が逆かもしれませんが、ベト4冒頭を初めて聴いてときびっくりしました・・・・これがルーツだったのか?・・とか思って。

降りてきたカッコウ主題は霧のAと半音でぶつかったまま停止します。
そこへ遠くから軍隊ラッパのファンファーレが・・・
カッコウはオーボエとファゴットがやっていますが、ファンファーレを邪魔しないようにか止まったところでオーボエがフルートに入れ替わります。
第1ヴァイオリンの霧もすっと消える・・

また話が飛んじゃいますが、マーラーが大好きだったと思われるショスタコーヴィッチの交響曲第11番冒頭、同じように弦のユニゾンの持続音が動かない空気を表現していますが、ユニゾンでゆっくり動く旋律が空気と半音でぶつかるところがあります・・
意識したかな・・・これ・・・偶然そうなってるだけかな・・



面白いので最初のハンブルク稿を見てみますと・・・

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弦楽器は普通の奏法、pppの伸ばしがずっと続くだけです。
その後を知っているからチープに見えますが、普通に考えるとこうなりますよね・・
と書いてから楽譜をよく見ていくと
この先、展開部に入るところで再びこの音楽が出てくるところにはフラジオレットの記号がありました。
フラジオのアイディア、この時点で全く思いついていないわけじゃなかった・・

予告とカッコウの楽器配置も違います。ピッコロとフルートがオクターブユニゾンだったり・・なんというか普通なんですよね。
言いたいことは、巨人冒頭の楽器配置もなんとなくおかれたのではなくて相当工夫して書かれているんだということですよね。

でファンファーレ、4楽章でこの部分が再現されるときと同じく、最初はミュートをつけたホルンだったんですね。ここでファンファーレにクラリネットを採用という暴挙に出たわけですがダイナミクスはpppじゃなくてppなのではっきり聞こえなくちゃいけない、でも影絵のようになって・・素晴らしいよね冒頭から・・

piu mossoとあってファンファーレは早く演奏するのは巨人も同じですがですが、最初は途中からaccelerandoするようになっていたんですね。
縦線みたいなのが書いてあるところが加速開始点かな?
やめているんだから、大げさに加速する演奏があったとしたら間違いいだということ?
書いて無くたって自然にうまいことやるだろということ?

このファンファーレ、この曲のいたるところで鳴るだけでなく、交響曲第9番でも鳴っています・・3番でも鳴ってた・・
単なる軍隊ラッパの描写じゃないですね。
彼の心の奥底に刻まれていたと思う。

Comment

付点と三連符で登ってゆく あの「巨人 」ファンファーレ
こんにちは、Unagiさんご指摘の 付点と三連符で登ってゆく あの「巨人 」ファンファーレ、興味深いですね。マーラーのいろいろな曲の中で「あ、また出てきた 」って、こいつの姿をチラチラ見かけるたび、私は 手塚治虫が自作の中でやはり繰り返し登場させていた瓢箪接ぎを勝手に連想してます(笑 )脱線失礼。 - でもこのファンファーレ って ホント彼にとって一体何の意味があったんでしょうね。
たとえば「第10番 」のフィナーレで 布を被せた大太鼓が連打される不思議 - この真意が、ニューヨークの高層ホテルの窓からマーラーがアルマと目撃した 殉職消防夫の葬儀で鳴らされた弔打を再現したものだったなんて・・・そんな超個人情報、アルマ夫人に教えてもらわなかったら 私たちには解明することなんて無理ですよね。でもマーラーは 聴き手の理解には全然無頓着。個人的な記憶も回想も躊躇なく自作に投入。 ・・・ですから あのファンファーレにしてもマーラーの「心の奥底に刻まれていた 」レベルの、彼にしか解らないものだったに違いない - と私もそう思います。いつも発見に満ちた記事・・・毎回楽しみにさせて頂きつつ、今日もポチして また来ます (^^)v
Re: 付点と三連符で登ってゆく あの「巨人 」ファンファーレ
あっこんにちは
いつもありがとうございます。
マーラーの音楽はいくつもの暗号と謎解きが隠されていて興味が尽きないですよね。
作曲者自身に質問してもきっとはぐらかして細かいことは言わなかったんじゃないかと想像します。
どの曲だか忘れましたが作曲者自身がこの曲は聴き手に謎を突きつけるとか言っていた気がします。
皆で謎解きしなくちゃ・・
憧れますねそういうの。
私もブログの中に謎解きでも仕込みましょうかね。
10番も面白いですよね・・
聴けるようにしてくれた人たちには感謝したいです。
  • 2017/03/04 22:05
  • unagi
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