マラ4の自筆草稿にTUBA

マーラーの第3交響曲は世界の全てを見て回るツアーみたいな曲ですが、計画段階では天国も見てくることになっていて先に完成していた「天上の生活」という歌曲を終曲として組み入れる予定でした。
しかしそれでは曲が長くなりすぎるため、「天上の生活」は第3交響曲からは外されました。
そこで「天王の生活」を終楽章に据えるべく新たに3つの楽章を作曲して完成したのが交響曲第4番です。
全体的に疑似古典的なフォーマットになっていて終楽章とバランスをとるべくトロンボーンとテューバを含まない編成でかかれています・・・と思っていました・・・
ネットに4番の自筆草稿みたいなのがあったので見てみたんですが、驚いたことにテューバが入ってるんですよ。
この稿は作曲の途中段階に当たるもので、この内容で演奏されるという事は絶対にありません。
なのでこれを見て騒いでもしょうがないのかもしれません・・・
作者も、これを見て喜んでいる馬鹿(私のことです。他の人は馬鹿ではありません。)をみたら苦虫をかんだような顔をしていやがるかもしれません。
でも、私にはこの事実が面白いんです。
例えば

第1楽章の山場、ハープのトレモロ他オルガンのペダルのような低音の伸ばし上でトランペット他が歌うところ・・・

ハープはいなくてテューバが低音をやってます。

その先、再現部の第2主題が出てくる直前のところ
ティンパニがやけに歌っていたりしますが、


もとはティンパニじゃなくてチューバに歌わせるイメージだったんですね。
逆にここのティンパニは特別な感じで歌わなきゃいけないんでしょうね。

第3楽章の後半山場、ティンパニが両手でたたいたりする付近

テューバ伸ばしもやってますが(スクロールして右のほうも見てみてくださいね)、
ティンパニが音量を落としながらエコーみたいなのをたたくところ、名場面ですがテューバがやることになってるんですよ!
ティンパニはあとから追記してる・・
あそこなんかは、最初から作曲者の頭の中でティンパニが鳴り響いていたんだろうと勝手に想像していました。
でも全然違ったんだね。
その上の方でハープのグリッサンドが上がって下がってまた上がるところ、最初は普通の上昇するグリッサンド一本だったんですね・・
こんなの見てると楽しいねー
これはとりあえず一度書いてみて検討するための楽譜といったところなんでしょうか・・
これを見て最初はこうするつもりだったのか・・と思うのは違うかもしれませんね。
交響曲第4番は3番にはない細かなオーケストレーション上の工夫を取り入れ始めてると思うんですよね・・そういうのはまだここにはあまり見えない。これを見ながらいろいろ工夫を考えていったんだろうなぁ・・
思うのは、マーラーの作品は天才の一瞬のひらめきで出てきて固定された・・のではなくて
書いては消し・・みたいな試行錯誤の上に出来上がっているんだなぁ・・より良い姿を求めて何度修正し練り上げっていったんだろうなということ。
もう一つはオーケストレーションは大幅に変わっていても、旋律や構成などの音楽そのものは一貫して変わらないらしいということでしょうか・・
ブルックナーみたいに曲自体が全く別なものになっていく作曲家もいるわけですが・・作曲自体には迷いがないんだよな・・
解説などにマーラーの交響曲第10番について第1楽章とプルガトリオの一部は総譜化が行われ・・と書いてあったりします。
第1楽章は完成しているとまで書いてあったりもします。
でも残されているあれは4番のこれと同じような段階じゃないのかなぁ・・・彼の特異なオーケストレーションという面でまだまだ全然完成じゃないんでしょうね・・
半面音楽そのものはずっと変わらないはずだから、補筆演奏にはものすごい価値というか説得力があるとも思います。