カオス

多重テンポが楽譜上に現れる場合、そのことが言葉によって指示されている場合と、音符そのもので見かけ上の多重テンポを固定している場合があるんだと思います。
単純な多重テンポとはちがうのかもしれませんが、マーラーの9番にも上記の後者の様な感じで昔から気になっている部分があります。

第4楽章は冒頭に叫ばれる旋律の中にあるターンがしつこいくらい繰り返されます。
別な曲から引用されているターンに似た音型も何度か繰り返されてとても重要なのですが、それの話はまた別にするとして・・
なんとなく音楽でターンが出てくるときは愛を示していることが多いような気がします。

もともとはワーグナーのイゾルデの愛の死からきてるのかなと思ったりしますよね・・

これが第3楽章のトリオで予告されるのは有名な話ですが、

トリオに入る直前、せわしない音楽の中でさりげなく顔を出しているのが面白いですね・・
第1楽章で


愛を叫ぶ重要場面の直前に出てくるこの5連符、第1ヴァイオリン、その前の小節で力をためていますが・・・
第4楽章、東洋風の中間部の後クライマックスに向けて音楽はもり上がっていきます。何段階かに分けてのぼて行くんですが、各パートが一見バラバラに動ぎだしてカオスのようになっていく部分があります。


その中にターンのような音型があります。
ここではこのターンが短い時間にいろいろな速さで奏されていてあたかも多重テンポのように聞こえると思うんです。
実際にはここはホルンなんかも別なことを叫んですごいことになっていますので細かいものをそれぞれ聞き分けようと思ってもなかなか聞き取れません・・
それでいいんだと思います。
ぐしゃぐしゃの中からなんとなくいろいろ重なって聞こえてくるターン。
いろんな別口それぞれが愛を叫んでいるんだ・・
みたいなのがすごいというか大事というか・・
最後に第1ヴァイオリンが力をためて5連符を叫ぶところは第1楽章のあそこと同じですね。
この修羅場の後に 愛も、生、願いも、すべての叫びが運命によって引き裂かれるのを目撃することになります。