恐山

結構前になると思うんですが青森の恐山に行きました。
夏休みだったと思う。
恐山というと薄暗いウズリ湖のほとりで風車がカラカラ回っているような・・霊界との境みたいなイメージだったんですが・・
実際は真夏の猛烈な暑さでそんなイメージとはほど遠かった・・ただただ暑かった・・
あの雰囲気をみたかったら雪の降る直前くらいにいった方がいいのかもしれない。
ブルックナーの交響曲第9番を聴いていると第3主題が終わったところに不思議な場面があります。
第3主題は、すべての人々が悲しみ、苦しみを抱えながらも前に向かって歩んでいる姿・・だと思っているんですが、その音楽の結論としていったん明るく柔らかい日差しのある平穏の場にでる・・

へ長調この場でフルートとピッチカートの第2バイオリンが何かいっている・・
鳥?・・その音がHなのだ・・へ長調とぶつかって尋常でない雰囲気となっている。でも攻撃してくるような何かいやなものではない・・
暖かいといえば暖かい・・
でも人知を越えた何かのような感じもする。
人間のか弱さを示しているような気もする。
元々この曲は人間が神へ向けて捧げている音楽だと思うんです。だから、ここは人間界だと思うんですが、オーストリアののどかな田園風景とかそういうのではなく・・・
なにかこう恐山的な・・あの世との境みたいなそんな場にまで行ってしまっているような印象を受けるんです。
音量小さいと聴こえないかも・・
この演奏は、とても感動的だ。
ブルックナーの権威みたいな人なのに暗譜じゃなくてちゃんとスコアめくっていくでしょ。
これはこの音楽に対する一つの態度表明みたいなものだよね。
優良クラシックファンはワルター・コロンビア響のブル9なんて言うと「あんなのアンサンブルも稚拙でダメだ」とか言って笑うんでしょう?
でも私は大好きです。
誰が何言ってようが関係ないです。
ワルターはブルックナーが理解できるようになったのは40歳過ぎてからだった・・みたいなことを言ってたと思う。
この人の愛と歌にあふれた演奏はブルックナー演奏の本筋からは少し外れるのかもしれないけど、私にブルックナーを教えてくれたのはこの人でした。
恐山といえばイタコ。
ブルックナーやマーラーを呼んであの曲の続きはどうするつもりだったんですか?
ここは?
シンバルは入れるの?
とか聞いてみたい。
でもきっとイタコの呼んでくれたマーラーは
「皆と仲良くしろ」
「秋ごろに腰を悪くするから気をつけろ」
とかしか言ってくれないと思う。