名曲喫茶ライオン

一般人が簡単にオーディオセットなんて持てない時代、クラシックのレコードがかかっているのを聴きに行く名曲喫茶というものがあったそうですね。
今でもあるのは知っていたけど、自分は行っても楽しめない気がしていったこともなかった。

でもどこか出かけたいが行き先も思いつかないので、死ぬまでにに一度くらい言ってみようと渋谷の名曲喫茶ライオンというところに行ってみました。

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そこはスマホが案内してくれるからたどり着けたけど・・・みたいなとこでした。
入り口のドアに「店内撮影禁止」とあったので店内写真はありません。
撮ってるお客さんもいたけどね。

入ってみると薄暗い店内には白いカバーのかかった椅子が見える・・勝手に座れ的な雰囲気を感じ、二人で向かい合って座ろうかと思うとテーブルの向こうに椅子がない。え?
ステージというかオーディオに向け方向性をもった配置となっているらしいことはすぐに理解できた。あせって部屋のすみの対面で椅子のある席にとりあえず座ってしまう。

お、音楽は‥あぁかかってる。
ソプラノが歌い・・男声合唱が答える・・知らない曲だなぁ・・歌唱法?が古い気がする・・誰の曲かわからないぁ・・
モノラル・・・
ここでのオーディオ、音楽は2chステレオではないらしい・・
水とメニューのほかにプログラムというの二人分持ってきてくれた。
当たり前なんだろうけどケーキとかパフェなんかあるわけがない。
整体師に「冷たいものは飲むな」といわれたばかりなのにアイスコーヒーを注文。
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プログラム。
昔使ってた版で刷ったような・・
立体再生装置とか立体名曲というのが誇らしげに書かれているけど、2chステレオのことではない。
巨大なモノラルスピーカーが2回の神殿みたいなところに作り付けてある。
ごちゃごちゃ書いてある小さな文字は、昔風の文体で

 アメリカの雑誌オーディオに当店の演奏装置が写真入りで掲載になりましたので渋谷のライオンは世界的のライオンになりましたことを光栄に存じております。-昭和三十四年-

とある。
この文体・・もう80になるのかなというかつての上司も、何か書くとこういう感じの文章を書いた。
技術文書なので恥ずかしいと思っていたけど、そういう時代もあったのかなぁ・・
この鞄は入社した昭和33年に買ったものだとか言ってたな・・


1959年といえばステレオ黎明期の名録音が次々録られていたころだ・・とはいえ一般でステレオはまだ次世代のものだったはず・・
このお店はそれ以前のモノラル絶頂時代のポリシーがそのまま固定されて今まで来ているんだなと思った。
毎日3時と7時からはコンサートとして店の設定したプログラムを聴かせてもらえることになっている。
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むかしはこれを目当てにみんな聞きに来たんでしょう・・あぁ今でもそういう人もいるのか・・
今日はシューベルトの4番とシューマンの4番ヨッフム指揮のコンセルトヘボウ・・だけどうんと若いころの昔のヨッフムなんだろうな・・
こちら側にも
真のHIFI 立体音響
全館ステレオ音響完備 (帝都随一を誇る)
とある・・

しつこいけどここでいうステレオはいわゆる2chステレオのことじゃない。
部屋中に広がる音・・みたいな意味だと思う。
1950年代なんて誰もが家でオーディオを持ったりできる時代じゃなかったんだろう・・
きっとその頃にこれは驚きの超絶音響空間だったんだろうなぁ・・

しかし帝都って・・
今東京メトロだっけ、私が鉄道少年だった子供の頃は「帝都高速度交通営団」だった。

出てきたアイスコーヒーをちょっと飲んで落ち着くと店内の状況も見えてくる・・
座ったここは音的にあんまりよくないかもしれない・・後で席変わってみよう。
隣の人は、ここが何か知らずに待ち合わせに使ったみたいで「ここ喋っちゃいけないんだって」・・は?みたいなことを言っていました。
ネットで見るとみんなここの私語はご遠慮ねがいますみたいなのを「特殊な」特徴として上げている。
そんなの言われなくたって当たり前でしょう?とかいうと変態扱いなんだろうな。
クラシックを聴かない人と話すとき気を付けていないと認識のずれで嫌な思いをする。
私が変態なだけなのかもしれない。どちらにしろ嫌な思いをしたくないので人音楽の話はしないようにして生きてきました。
最近油断して失敗した。


巨大スピーカーの前にはベートーベンの胸像・・
再生装置は多分オーディオマニア的な超絶高価なもの・・ではないな・・
音質・・をどうこう言う場じゃないんだよな。

バイトかなとも思う若い店員さんがマイクで「モンテベルディーの・・・でした」
えっあれモンテベルディだったの・・時代だな・・全然そういう風に聴こえなかったけど・・
これからコンサートだと言ってシューベルトの4番がかかる。
シューベルトの4番は今では有名曲なのかもしれないけど実は全然聞いたこともなかった。
ベートーベンの先にシューベルトがいるんだなぁ‥なんかいい曲じゃないかなぁ・・
知らないいい曲を教えてもらえたという・・俺も名曲喫茶の客になれたのかなぁ・・
楽章が終わると何人かのお客さんがお金を払って出て行った・・
「ありがとうございます」なんていわない。
移動は楽章間とかちゃんとしてる気もする。
多分楽章じゃなくて曲が終わったと思ってんだろう・・
あさってみたいなところから人が出てたので、2階席があることに気付く・・
この際だから行ってみるとスピーカーの前の部分は吹き抜けになっていて、2階最前列はスピーカーの真正面だ・・

音質とかについては・・
オーディオマニアみたいな人向けにはやってませんと言うことなんでしょう。

周りを見ると・・白いカバーがついた椅子が並んでいる様子は昔本で見た客車時代の特急「燕」の一等車みたいだ・・・二等車かな・・
昔はきっとすごい空間だったんでしょうねこれ・・完全冷房完備・・・
そこに座ってるあの人は・・寝てら・・
指でリズムとってるあの人は聴いてるんだろうな・・
ノートパソコンなあの人はどうなのかな・・
腕置くんで目を閉じてるこのひとは・・
一番ちゃんと聞いてないのは俺だな。
ドアを開けて入ってはきたものの・・えっ何ここ?・・という感じで出て行った人もいた。

シューマンの交響曲第4番・・
そう、この曲が似合うよなぁここは・・・
この曲、カビの生えそうな陰気さと明るく開放的な躍動感が同居しているいい曲なんだけど、その開放感がばぁーっと炸裂するような演奏が好き・・ちょっとそういうのここには合わないかなぁとも思ったりして・・

嫁さんが退屈だろうし店を出ることにしました。

今聴きたいだけならスマホとイヤホンでどこででも聞ける。
貴重な歴史的録音もYoutubeに転がってたりする。
でもそういうんじゃない人が来るんでしょう。
ネットで検索するといっぱい出てくる記事はみな、ちょっと変わった珍しいものがあるから見てきた・・みたいなスタンスだ。多分普段クラシックもオーディオも興味ない人たちじゃないかなぁ・・
そういう人もいっぱいくるんでしょう。

私は田舎からへらへら出てきたからあれだけど、都会でわさわさ生活してるとたまにこんなところに来てみると心が満たされるのかもなぁ。
俺は恵まれていて家で好きなように音楽を聞かせてもらえるけど、マンションで子供優先、仕事も忙しい・・嫁もなぜかずっと怒ってる・・とかだったらここに入り浸るかもなぁ・・
人と話すと嫌な思いに至るような私は、人と話しちゃいけないのが基本のこういうところが・・そういうのじゃないか・・
今はそういう気分じゃないけど一人ここで1日沈みたい日も来るかもしれない。誰にも邪魔されず音楽だけがある・・

いろんな人がいていろんな考えがあるんだろうけど、私が何をどう感じようと関係なくこのお店は今後も存在し続けるんでしょうね。

音に感動しましたとか、本物を知りましたとか思ってないことを言うのは逆に失礼だと思う。
とはいえ、誇りをもって続けられている何かみたいなものを感じてそこには感動しました。
一度行ってみることができてよかったなと思います。


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手前の駐車場に車を止めてタワレコによくいった。
駐車場解体してた。タワレコに行く気も全然なくなった。
もともと都会の刺激とか時代の最先端とかいうのとは縁のないところで生きているけど・・
なんというか・・もう渋谷に行くこともないのかもなぁ・・

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クラシック音楽が好きです。

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