昔の姿

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隣町の某所ですが、道路がここだけ少し広くなっています。
かなり昔、ここには路面電車が走っていたというんですね。50年以上前に廃止になったので60代以上の人しか知らないと思います。当然私も見たことはないです。
昔ちらっと聞いた話がずっと忘れられなかった。
ネットを検索すると当時のこの場所の写真が見られて感動しました。砂利道のわきに単線の線路が埋まっているんだけど、行き違いのためここだけ線路が複線になって車両が交換していた。
何だか知らないけれど乗ってみたかったなぁ・・・あれに。

普通の人は今目の前にあるそれがすべてで、無くなってしまった昔のことなんかどうでもいいはず。
でもこういうそんなこと知ってどうすんの?みたいな余計なことの中にも面白さがあるんじゃないかと思うんですよね。

ブルックナーといえばハース版とかノヴァーク版とか言っていろんな楽譜で演奏されることがあって、どれが決定稿なのか誰も決められない感じなのが有名です。
なんだよそれというのもあるけど、逆にいろいろ聴けて面白い気もする。

それとはまたちょっと違う話で他の交響曲も一発で完成したのではなく、作曲者自身が何度も大改訂繰り返した結果今があるという曲が多い。
その途中の段階の楽譜は破棄されなかったため、面白がって現代の人がそれを演奏してみたりすることがあります。
何やってんだよなんて思って聴いてみると大変興味深いもの、面白くてわらっちゃうものもある。

交響曲第4番なんかは4番と言いながら結構たった頃に大改定を施し、後期のスタイルで完成しています。
最初に完成させた第1稿みたいなものの演奏を聴くことができるんですが、今通常演奏される4番を知ってる耳で聞くと超古代文明的なびっくり世界が広がっていて面白いんですね。
比較すれば、通常演奏される版のほうが優れているのは間違いないし、癖がありすぎちゃって常時愛聴するのはちょっときついですけれど。




冒頭付近から旋律、音高だけじゃなくてメロディーが不安定な寸足らずで聞こえる。1小節足りねーよみたいな・・
最初に頭に浮かんだのはこれだったんだね・・その後、一般人にも受け入れられるようにするにはどうすべきかと色々心を砕いたんだろうなぁ。

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改訂の手を付けなかった5番と同じく、この第1稿も協会でのオルガン演奏のスタイルに強く影響されていて、場面が変わるとごとにいちいち音楽がとまって全休符を挟む・・オルガンならここでストップを変えて次に備える場面だ・・・
ロマン派の時代にそれじゃ受けないので、その後、次の場面へ滑らかに移行していくような曲を書くようになった。
3番も4番も後期のスタイルに改訂しているので、今は切妻型みたいな姿を強く残している5番のほうが古風に見えます。

1、2楽章はいまある素材を使いながらもどの作曲家の初稿にもありがちな間の悪さ、余計なものの多さみたいなものが耳について・・圧倒的に改訂後のがいいよな・・と思ったりも・・

第3楽章のスケルツォは現行とは全く別な曲ですね。
現行のが魅力的だよな・・
でもブルックナーのスケルツォの様式にしっかり準拠して書かれていてどう聞いてもブルックナーのスケルツォだ。


面白すぎるのはフィナーレですね。
今と全く別な曲なようで今ある要素も多く見られます。
第2主題・・
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今はブルックナーリズムになっているところが5連符で書いてあるんですね。この後5連符に異常なまでにこだわって5だらけになってるんですよ。このすごくモダンな感じが聴いていて面白い。
その後20世紀に入ると複雑なリズムを持った音楽がいくらでも出てきますが、こののどかな田園風景の中に半導体が埋まってるみたいな変な感じがちょっと面白すぎる・・
そうかと思うと3番のどこかをふと思い出せたりもする。

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ブルックナーユニゾンで5連符・・こんなの指揮者も奏者もどうするんだって感じですよね。
1874年のウィーンでこれじゃ演奏拒否されるよね。
ヴァイオリンをI、IIと書くのはありそうだけど、ビオラをIIIと書いてるんですね。
そんなの略記でどうでもいいだろという話なのかもしれないけれど、でももしかすると弦楽器をどうとらえていたかが現れてるのかもしれないよねえ・・

このYoutubeの演奏、曲の最後の最後は5連符連呼のパートが四分音符2つ+3連符に置き換えられてるように聞こえる。
そういう版もあるんだっけ?
昔金子さんの本に詳しく出ていました。が、寒くて本棚のある部屋へ行く気もせず・・

ブルックナーの4番をよく知っている方はこれ面白いから終楽章だけでも聴いてみてください。
私は面白くて笑っちゃいます特に5連符に・・・

聴衆に理解できるかとか、(当時の)演奏者に受け入れられるかなんて全く考慮しないで、感じたものをそのまま形にしようとしている感にちょっと感動しますね。
これを聴くと、改訂後の完成形を聴いてもそこにどんな意味があるのか、何が素晴らしいのかが浮き出てきます。
こんなのを破棄しないで取っておいてくれた作者と、演奏してみようよと言いだした人と、面白がって聴いてくれる人たちのおかげだなぁ・・
みんな余計なことなんだけれど、余計じゃないと思うんだよなぁ。

昔学校の先生が講演をお願いしようと冒険家の植村直己を訪ねたときの話をしてくれたのを思い出しました。
冷蔵庫からジュースの瓶を出してきてハイっと渡された・・・
奥さんが出てきて「あなただめでしょ」的にコップ入れて氷も入れてお盆にのせて・・みたいな。
そういう、素朴な人だったそうです。
なんかあの話を思い出しました。

このブルックナーの4番の第1稿はまだコップとかなんとかがいまいち掴めていない素朴な、だけど強い創造力を持った芸術家の姿なんでしょうね。



Tag:ブルックナー  Trackback:0 comment:2 

プロフィール

unagi

Author:unagi
誰にも迎合できません
2022年11月からピアノ習い始めました

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