雨上がりの店

峠道にあるお店へランチにいきました。
すぐそばを何度も走っているけど隠れたような位置にあって今まで全然気づかなかった。
雨は上がったけれどまだ暗い。
順番にちっちゃなスープ、ちっちゃなパンとかでてくるから、よくあるメインも小さなさらにちょこっとのって終わりみたいなのを予感し覚悟してると

こんなのが出てきました。
ハンガリアン・・なんだっけ忘れちゃったけど豚のトマト煮料理。
BSの旅番組を見てるとどこか外国のレストランでこんなのを食ってる。
ちょっとそんなとこに行けたような気分。
いろんなものをゆっくり味わったら、足りないようにみえたこの量でも満足できた。
バッハのヴァイオリンソナタ第3番のAdagioなんだけど、YouTube見てたらこの演奏がありました。
この2人の奏者は多分30年くらい前に来日してこの曲をやっていったと思うんです。
まだできて間もなかったと思うサントリーホールでの公演がTVで流れたのでビデオに録り、中学生の私は毎日見て聴いた。
ヴァイオリンを自分でも弾きたくなって通販で売ってたのを買ったりもしたけど弾けるどころか音も出なかった。
あの時刷り込まれた演奏は今でも頭の中で鳴ります。
このYoutubeは1994年とか書てあるのでそれからさらに後の記録のようだ。
でも、はっきり言てしまうとこの演奏は記憶にあるのとは違いあまり好みじゃない。
サントリーホールでの演奏はもっとピアノはペダルを深く踏んでガンガン鳴らし、ゆったりとしたテンポで深く歌うロマンチックな演奏だった気がします。古楽なんか関係ねーよみたいな。
YouTubeのこれはその古楽の流れにちょっと乗っかろうとしちゃってる気もする。
演奏会場の大きさや、客がいるか、その時の気分などいろいろあるでしょう。
当たり前だけど同じ人間が同じ曲を演奏しても同じ演奏は2度と生まれないのは自然なことで、それでいいんだけど。
今日会うあの人は、記憶にあるあの人じゃない。
明日はまた別人なのかもしれない。
毎日のように聴いたはずだけど、ちゃんと雨の日にこの曲を聴いていたシーンが脳裏に出てくるものなんですね。
そしてその時思っていた女の子に告白して振られるというよりちょっと悲惨な感じになった。
一昨年その人と再会する機会があった・・けどよくある笑って振り返るにはならなかった。
よっぽどなんだな・・・じゃなくてこの曲いいでしょう?
この2人のこの曲の演奏をもう一度聞きたいとずっとずっと思ってきた。
内容はともかくずっと会いたかった人に再会できたみたいです。こっちのほうが嬉しく感慨深い。
ここに写っている彼らは私の探した彼らだけど、実際はもうずっと歳を取ってしまったんだろうなぁ。

曲尾。続く・・みたいな。こういうのなんとか終止とかっていうんでしょう?名前なんかどうでもいいんですよね。
少しだけ明かりが見える・・雨上がりの空みたいでしょう?

帰り際、シェフが出てきて挨拶してくれるんだけどお互い噛み合わない・・ちょっと微妙な空気。
今思えば、慣れないところお客をいい気持で送ろうと何とか話をしようとしてくれてたのかもしれない。
駐車場からゆっくり出てきて狭い道をそろそろ走ってるんだけど、ミラーの中から消えるまでシェフは深々と頭を下げてた・・
俺は威張りたいとかじゃないから頭を下げられるとか普段は気にしないんだけど、でもお客を大事にしたいんだみたいな気持ちは強烈に伝わってきました。
書かないけれど食べている途中で気になることがあって、もう次はなくていいかななんて思ってた。
でも、また行くよ。その気になることも埋まって消えた。
折角しようとしてくれた会話はできなかったけれど、おいしかったと思ってまた行けばそれで十分通じるもんでしょう?