巡礼の車窓から

大阪に行ったことを書いたらいろんな人がいろいろ教えてくれて楽しく嬉しかった。
もしかするとそのあたりからもう大阪かなのかも。

昨年吉野山の金峯山寺で「空海はここから山中を南へ1日、西へ2日歩き」というような文言を見つけ、その先にあるんだろう高野山へ自分も行ってみたい思った。
日帰りでは時間的に厳しく躊躇していたのだけど行きたいところがあるならいけるうちに・・そう思って調べると同じ条件なのに日によって異なる結果が出てくることに気付いた。
高野山へ登るケーブルカーは車両と設備の更新のため長期に休業して代行バスが走っていたらしく、新しい車両が運転を開始する日が偶然にも私が行こうかと思っているその日なのだとわかった。
なんだこれ俺呼ばれてるんじゃないのか・・そんなわけないんだろうけど早起きして雨の中始発の新幹線に乗った。
真っ暗な空は愛知県に入ったあたりから青空に変わってゆく・・考えてみるとこの状況、以前吉野に行った時と全く同じな気もする。
奇麗に晴れた新大阪から地下鉄で難波へ。

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でっかいエントランスに圧倒されつつ、窓口でいろんなものがセットになった「高野山・世界遺産きっぷ」を購入する。
ついでに帰りのこうや号の指定を取ろうとすると
いんですか?乗り遅れたら無効になりますよ!
このあとも何度も繰り返していたのは、あそこはそんな短時間で見てこれるところじゃないんですよみたいなことを教えてくれているのかも。
ありがとう。
窓側でと言ってみると
進行方向右側左側?
え?
おすすめは?なんて聞いてみたら、
この時期はねぇ‥太陽の光線の加減で・・こっち側は逆光になるんですねぇ・・とかすごく丁寧に考えてくれ始めた。
聞いても私はどんなところをどう走るのかわからないのでよくわからない・・
こっち側のがいいかも・・
あ、じゃそっちで(よくわかってない)。
ほんとにいんですか?乗り遅れたら無効になりますよ!
おっけーおっけーとか言いながら。
切符買うだけだけどなんかちょっと暖かい感じがするのは大阪だからか?
たまたまいい人だったのかな?

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でっかい駅だね。
ここにも観光に来て関空から帰る外国人がいっぱい。
ラピートだっけ・・鉄人28号みたいなデザインの。
日本はどんな国に見えたんだろう?
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ここへは10年くらい前に来たことがある。一駅だけ乗って新今宮で降り・・どうしたっけ・・
通天閣よりもアスファルトの上に羽毛布団を敷いて寝ている人や自転車の荷台に玩具みたいなタコ焼き器を置いて(全然焼けてない)商売しようとしているおっさんの方が印象的だった。
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小田急みたいに特急が20分おきにとかじゃないんですね。
極楽寺まで行く快速急行にのる。
ホームに記されたドアの位置は2種類あり、案内板を見てると私がのる奴だけ他のと違う。この時は気にしていなかったけどその理由は後でわかるというか思い出した。
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いい歳してまた先頭にたって南海本線と並走する複々線を眺める。
大正時代にはもう複々線になってたらしいですね。
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天下茶屋を過ぎると本線と別れて地上に降りる。
てんかぢゃや じゃなくて てんがちゃやなのね。
地上に降りてすぐのあたりから水路を渡る橋の橋脚なんかにレンガ積みのものが多数目に入り、この鉄道が明治時代からここにあることを教えてくれる。
この写真はもうだいぶ進んだあたり。
小田急だと厚木を過ぎてみたいな感じかなぁ。
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気が付けば山中を走り勾配を登っている。
こういうのはまず単線の線路が山をよける形で敷設され、土木技術の進歩したのちに直線のトンネルを掘って複線化したとかでしょう。
知らないとこのまま高野山に向けて片勾配を登ってゆくようなイメージがあるけれど、和歌山県境にある大きな峠を一つ越えるようだ。長いトンネルを抜けると今度は延々すごい勾配で下り始めた。
下りの途中には林間田園都市駅。
東急田園都市線の終点は中央林間。林間都市構想だっけ?なんでもいいや。
南海電鉄が造成した巨大住宅地があるみたいだ。
橋本という駅で都会路線は終わり。
いよいよ山へ登る路線となる。
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紀の川をわたって・・ああいいねこの景色。
見たいのはこんなのだよ。
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車輪をきしませ勾配緩和曲線を右に左にのぼってゆく。
でもほんとにものすごくなるのは高野下という駅を過ぎてから。
モードが切り替わったような・・実際なにか切り替えるんだっけ?
全く違う走り方をするようになる。
速度を極端に抑えるがモーターは唸る。
車輪は絶えずきしみっぱなしで旋盤加工場みたいだ。
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レンガ積みのトンネルポータル・・じゃないか汚れてそう見えるだけか。
登り始めのあたりではレンガの立派な跨線橋もいくつか見た。
コンクリートが使われるようになって100年くらいか、このあたりの開通は大正時代みたいだけど工事は明治のころからやってたということ?
開通の遅かった終点へ近づくほどコンクリートの建造物が増えてゆく。

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この駅では行き違いのため15分停車。
15分?・・まいいか。
周りには何もない。腹減ったな・・どこで何くおうかななんて考えたりして・・
しばらくしてやってきた対向列車が行っちゃってやってもまだ全然発車しない。
いいよ。
ゆっくり行きましょう。


https://www.youtube.com/watch?v=hoyeAEljidU
これはエミール・ギリレスという人が弾いているベートーヴェンの田園ソナタ。
むかし何も知らずにCDを買ってきてこの遅めのテンポに驚いた。
驚くだけじゃなくて受け入れられずちょっと怒ってみたりして。
でもこの人にとってはこれがこの曲なんだし、こうでなくちゃという聴き手もいるだろうし・・そういう私にもこのテンポがしっくりするときもあるはず。音楽ってそういうもんですよね。

有名なのかもしれないピアノの調律師が書いた本によると、ソ連の人だったエミール・ギリレスは世界的超有名一流ピアニストなのに狭いアパートに住みアップライトピアノで練習していたそうだ。
私にはわからないけれどそれはピアニストにとって・・・まいいか。
ソ連は宗教もコントロールというかタブーにしたんだっけ?
聖書をプレゼントしたら大変喜んだとかいう話も印象的だった。


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しばらくすると特急が下りてきた。
15分を落ち着いて静かに待てないような心でここを登っちゃいけないんでしょう。
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周辺に集落もなくて利用者もいないようなところに駅があるのには多分列車交換以外にも意味があると思う。
誰もいないホームに旗を持った駅員さんが立って列車を待つ。むかしは国鉄のどんな田舎の駅でも見られた光景なんでしょう?
話としては列車に何か異常を見つけてあの赤い旗を振れば直ちに停車するんだと思う。
私の幼いころの記憶・・には残念ながらないんだけど。
こんな山岳路線だから普通とは違う安全への緊張感みたいなものがあるんじゃないかと思う。
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右に左に小さな半径で曲がる様子は見ているとかなり面白いのに写真に撮ろうとするとうまく収まってくれない。
ここを走る車両はみんな急な曲線を曲がれるよう車体長を普通の通勤車より短くしたもの。だからドアの数も少なく、難波の駅でもたくさん並んだほかの列車とは乗車位置が異なっていた。

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高野山っていうのは人が容易に近づけないようなとんでもない場所にあるというところにも大きな意味があるんでしょう?
崖っぷちもすごいけれど、岩山を素掘りで掘って作った切通の中を線路が必至で曲がっていく様子なんかを見ていると、とんでもないところを何とかして進んでいく苦労感みたいなのが私にも伝わってくるんですよね。
そして
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極楽橋に到着。
この超絶ロマンチックな駅名は何なんでしょうか。
蓮の花が浮かぶ池でもあるのかと思っちゃうけれど、そういうのは何もないようだ。
ちらっと見えた赤い橋がその極楽橋?
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中間改札があるのかと思ったけれど、高野線とその先のケーブルカーは一体みたいな扱いとなっているらしくそんなのはなかった。
渡り廊下で川をわたると
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あーいた。
新しいやつだ。
今日運転開始なんだからセレモニーかなんかあったのかな?
そんな形跡はみじんもなく、普通に地味にやってまーすという感じ。
でもなんかテレビカメラみたいなのがいた。
スタッフがみんな若いのをみて自分が歳くってんだよなとか思う。
よく見れば業者さんや保線の人?がいてなんかああ初運転日なのかもなという・・
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カーブを描いて行く先が見えないところが神秘の世界へみたいでいいですよね。
最後まで同じ列車でスーッと行けちゃったら場所のありがたみも神聖さもないもんね。
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さぁついたぁ・・と思ってもまだここからバスなんですよね。
鉄道で大きな川を渡って山へ分け入り、最後にケーブルカーやロープウェイでってところが吉野山とそっくりな気もする。そういえば同じ川だよな。同じ金剛峯寺という名のお寺があったりとか・・と思ったけどあっちは金峯山時だった。
なんとなくここも吉野山と同じように上がってしまえば歩いていける範囲にいろんなものが集まっているようなイメージがあった。
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でも、全然違うのね。
スケール感が。
この道路はバス専用で一般車だけじゃなく歩き人も入るの禁止だそうだ。バスに乗らないのなら極楽橋から登山?
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高野山な話はここには書ききれないので・・・

帰り。
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ケーブルカー車内の銘版には2019年3月。
今日はその最初の日。
前の車両は50年くらい使っていたみたいだからこの車両もそれくらい頑張るんだろうか・・
その最初の日のお客になれた。
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帰りはこうや号で。
幼い頃、誰にもらった絵本の中に私鉄のロマンスカーが並んだ絵があった。
小田急のロマンスカーに名鉄パノラマカー、近鉄のビスタカーに並んでなんかこう、三枚目とは言わないけれどずんぐりむっくりな愛嬌のある形の電車があったのを覚えてる。ヘッドマークにはひらがなでこうや・・
もう少し後で知ったその車両の名前はズームカー
ズームカー?なんだその名前なんて思っていたけど、力強く山を登り降りするための性能と軽やかに平坦区間をぶっとばす能力という全然方向性の違う性能にピントを替えられるところがズームということらしい。
今目の前にいるのは絵本にいた列車の次世代の車両。
絵本の中に見た気になる列車にやっと乗れるよと40年前の自分に言って聞かせる。

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もっといっぱい走ってんのかと思ったらそうでもないのね。
ここにも近鉄と同じように一般車を改造した専用車両による観光特急が走っているみたいだ。
でも事前に写真を見たところちょっと盛り上がれなかった。

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皇族を迎える間とかの天井みたいですね。
この駅は乗り換えのための駅だから、改札も一応形だけある感じ。
熊が目撃されてますよみたいな張り紙もあった。
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ケーブルカーへの渡り廊下。
温泉旅館みたいですね。
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空いてた。
この路線の車窓、新緑の季節なんか素晴らしいでしょうね。
紅葉も。
雪景色もいいだろうなぁ・・
中途半端な冬枯れの今は一番つまんない感じ?
でもいいの、人があんまりいなそうな今だからここに来ることができたし、落ち着いていろいろ見ることができた。

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あれが極楽橋?
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身をくねらせながら降りてゆく。
車両が下に向かって傾いてるのがよくわかるのね。
窓口の人が選んでくれた進行方向左側の席で正解だったと思う。
光線の下限もあるんだろうけどそれ以前に右だと多分山の斜面しか見えないかも。

途中に古い変電所の建物が見える。
勾配を下る電車がモーターを発電機とする回生ブレーキの電力消費用抵抗器が備えられている・・・はず。

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紀の川を渡る。
複線の通勤路線に戻ると今までとは全然違う音を立ててぶっ飛ばしてた。
さすがズームカー。
いいね、すごいね。
車窓には街があって、床屋があって、人が歩いてて・・
ふらっと降りて適当に歩いてみたいなぁ。

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なんばの改札付近には551の豚まん。
昔勤めた会社に大阪出身の人がいて「あかん」とか大阪弁が印象的なんだけど、「いこま」とかのほか「551!」とよく叫んでたので、なんかそれ美味いんだろうなぁと思ってた。
土産を買って帰っても誰もいないので今日はスルー。
また、来ましょう。

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結構さみしいけど結構楽しいよ。
クラシック音楽が好きです。

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