死神とカラスと中年

もう先週だけど2週間ごとの楽器のレッスンは、前回のような悲惨な気持ちでじゃなくまた頑張ろうなんて思いながら帰ってこれた。
でも内容的にはレールから脱線転覆してると思う。何回か前から出ていた意識過剰になりすぎて体が硬直する病はいよいよひどくなって痙攣しながら吹いてるから音もトレモロみたいになっちゃったり。4歳とか5歳のこどもみたいだ。みたいじゃなくて実際子供のまま止まっちゃってるのかもしれません。そういうのも含めて逃げちゃってることをやってみようというのだからいいの。
最後には少し安定してきて、頑張りましょう!という先生の笑顔を見て終わったような記憶。
その後の練習で、きっかけをつかんだか?なんて盛り上がるんだけど次の日になると見つけたはずのものは嘘のようにどこかに行っちゃってるのね。今日はなくすのが嫌で家に帰るとまたすぐ楽器をもてば・・・もうどっか行っちゃってる。
それでもなくすとまた見つけるのに何週間もかかっていたものが、つぎの日の終わり際にまた見つかったりするようになってきたような気もする。それも勘違いかもしれないし、実際何にもつかめてないのかもしれないけど。
初めてもう何か月だっけ?普通の子供なら初めて楽器をもって3分くらいで通過するところがまだできないんでしょう。
まあいいや、また明日。
この先どこを目指すかなんて話も遥か彼方過ぎて想像すらできないけどいいの。当面の目標は逃げないこと。
毎日こんなことをやってること自体が私にとって何かとても大事なことだからいいの。
しかしこう文字にして並べてみると、内容はダメ人間でも方向としてはポジティブな方をむいてるのね。
それじゃあ今この頭の中のにある暗い悪臭みたいなのは何か?
ふと、10年以上前に読んでいたブログを思い出した。
探すとまだあったけれど、もう何年も前の疲れた書き込みを最後に途切れていた。
ある趣味分野でそこそこ有名だったのかもしれないその人は、趣味とは違う場面での今私が持っているのと同じ不満をちょくちょく口に出すようになった。
本人は耐えがたいなんて思っているけれど、誰もが抱えるし、どこにでもあるようなものだ。
その不満はだんだんエスカレートしてちょっとどうかと思うような状況になったと思ったらその人はその場から逃げる決断をしてしまった。解らないでもないし、自分も若いときにげた。でも年齢的にきびしいよね?
しばらくは勝ち誇ったようなことを並べていたけれど、すぐに厳しい状況に泣き言が並んだような状態となりその後消えていった。
その人が今どうしているかは知らない。きっとブログが放棄されただけでどこかで元気にやっているんだろう。
しかし最後の書き込みで若くしてがんで亡くなった人について触れていたのは偶然とはいえ象徴的な何かを感じる。
何が言いたいかというと近代的で文化的に見えるこの世も、一歩踏み外せば命もあやうい恐ろしい世界なんじゃないかという事かなぁ。
え?そんなこと?みたいなきっかけから・・
人間には生きる理由が必要だ。
死神は、意外とすぐそばにいて静かな笑みを浮かべていると思う。
長年クラシック音楽を聴くのが楽しみで生きていますが、全然理解できなかった大曲にふと目覚める瞬間というのが来ることがあります。その機会は歳を重ねるごとに減ってゆくので、うれしさみたいなのは逆に大きくなってゆき、見たことのないい新しい土地を発見し足を踏み入れ新しい生活を始めるかのような気持ちになる。
今またそれっぽい。
https://www.youtube.com/watch?v=UzI-_dJsTc0
ショスタコーヴィッチの交響曲第14番は無調で極めて難解、ちょっと俺には無理だなんて思っていた。
その中でも比較的わかりやすいメロディーらしきものがいきなりなるこの楽章が急に頭の中で鳴った。

裸で始まるシロフォンソロは何も知らないと間抜けの踊りみたいだけど・・
行進曲調の音楽はこの作者のいつもの作風であると同時に、歌詞に登場する兵士を暗示しているとも思う。
興味をもって調べるとこの曲は近親相姦を扱った曲という解説を複数見かけたけどどうなのかなそれ?でもそれは違うでしょうという人もいた。
クラシックを聞いてきた人間ならこの楽器が死神を暗示するのに使われたことがあることがふと頭に浮かぶかもしれない。
全曲を死というテーマが埋め尽くすこの曲にあってシロフォン。
多分、作者も聴き手がそう感じることを想定していると思う。
兵士を愛おしい弟と歌うのは死神・・・
そんなことを考えながら最初の曲から聞いてみると、
わかりやすい旋律、和声、リズム、聴きなれたショスタコ節がスッと入ってきて無調の難解さなんてどこにもない。
あれ?この曲いい曲なんじゃないの・・
今こんなところ。
それがどうしたというところでしょうけれど、こんなことでもいいからあれば死なずに済むんだと思うんですよね。
もういいやと思ったらほんとにすぐおしまいだからね。
匂いでもするのか死神はすぐそばで見てると思う。
死神はもうちょっとどか行っててください。

あのカラス
どっかおかしい。

羽根が曲がってしまい飛べないみたいだ。
ずっと歩きまわっていて、人が来るとうろたえておろおろと逃げている。

飛べないので歩いてどこかへ逃げていこうとする・・
しばらくたってまた場の隅の方を歩いているのを見つけた。
・・・あのまま飛べないんじゃ、もう命の危険にさらされているという事じゃないだろうか・・
絶望的な状況にこちらまで悲しい気持ちになりながら彼のを追ってゆくと
あ・・
飛んだ?
木の上に上がった彼を見ると折れた羽根の角度はさっきの半分くらいになってる。
もう一度飛んで・・
浜辺に降りた彼の羽はもう曲がってない。
もうただのカラスだ・・
なんだおまえ飛べるじゃねーか・・
よかったね。
もう全然できないと思っても、
やってみればいいじゃんてことか。
諦めたら終わり。

どんより曇った空は海に色を与えてくれない。
でもそれなりの光を落として、一瞬奇麗だった。