お別れ遠足

嫁さんの車が引退するということで犬と三人そろってお別れ旅行に・・
と言っても家から5分くらい走ったようなとこだけど。
私も最初の車は半分だまされ買わされたようなものだったけれど別れ日にはありがとうなんてでっかい声でいってみたりした。
2台目の時は引き取りの朝に車内まで入念に洗車した。
3台目は・・あれ・・写真撮ったり・・

先日の路地裏に隠れたパン屋でパンを買ってきた。
公園も下手くれもないけど人通りもないので道端の空き地に腰かけて食べる。
のどかなところだけど以外に車が通るのね。
むかしは夕方になると畑から帰ってくるのか馬ではなかったけど耕運機がリアカーを引っ張ってるような道だった。
何となく自分の場所だとかいう訳の分からない思いがあり、恥ずかしいとかないから。
犬は自分が食えるもんだと思って笑いが止まらない。
パンは濃厚なチーズとかマヨネーズがふんだんに仕込んであってかなり濃い目な仕上がり。
美味しかったけど若い人向きだなぁ・・なんて感じてる自分に気付く。

最近歳のせいかヘロヘロだった犬は何故か急に元気になってあばれてる。
いつもと違う景色が楽しくてしょうがないんだろうね。
またしても食いすぎちまったしお散歩しようか。
犬の元気に引っ張られて結構歩いて
普通の人は入っていかないような小道へあえて入っていけば

電車が坂を登ってゆく・・
幼いころ、このあぜ道を何度も歩いた。
線路を渡ることには渡り板や橋が掛けてあったけど、今はフェンスで絶対通れないようにふさがれてしまい誰も通らない道はこの先で草の中に消えてしまっていた。
ここを歩いたときまだ笑ってたかな?
何年か後、あそこを走る電車からこの道を眺めた。
夏も、冬も、浴びせられる人の声や視線に車内を地獄と思うようになってからも。
30年近くの時間がクッションになってあんなになっちゃってんのによく毎日通えたななんて他人事みたいだけど、でもそのおかげで今があると思う。
周囲にも自分に対しても何も気づかないふりをし続け耐えてたあの時の私、ありがとう。

あったかいね。
10年くらい前に家からここまでこの犬と歩いてきたことがあった。
犬はまだ大人になりかけで体力が有り余っていてぐいぐいと。
あの時まだ線路渡れたんだよな。
犬は怖がったけど渡った先に畦道が続くのを見たら急にはりきっちゃって。

あれはたしか流氷を見に行くはずだったのに前夜キャンセルして腐っていた日だった。
上空を通過する旅客機を見てちくしょうなんてひとり呟きながら・・
最近よれよれっぽかったのにこの日はやけにはりきって若返ったみたいだった。
犬もあの日のことを覚え思い出しているんだろうか?
https://www.youtube.com/watch?v=WCGhq4xbPpw
この日気分がとてもよかったけれどこれも聴いている間はとても気分が良い。
小学校で毎日聴いたブランデンブルク協奏曲第3番は第1楽章だったけれど、続きのその3楽章。
中学生になり毎夜のように聴いた。

初めて手に入れたポケットスコアはバッハの管弦楽組曲とブランデンブルク協奏曲だった。
自分で弾けるわけじゃないから読むというより目で追うだけ・・でも楽しかったような。
楽譜上の風景が景色として面白い作曲家とそうじゃない作曲家がいるんですよね。
バッハはどんな曲でも圧倒的に前者と思う。

幼いころに散々眺めた踏切。
遮断機の棒って、竹竿でできてたよね。
節のある竹にただペンキ塗っただけみたいなので・・
科学技術工業立国だけど竹竿・・
馬鹿にしようというんじゃなくて、懐かしいの昔が。
この日、車とお別れ都会にと散歩と言いつつ幼い自分を探すようなルートを選んで歩いてた。
そんなもんどこにもあるわけないけどたまにはいいじゃない。

幼いころに住んだ家の隣にある河津桜。
俺のこと覚えててくれないかな?
河津桜はソメイヨシノと違う‥なんて知る訳もなく、
ずっと桜と言えば濃い桃色の3月に咲く花だと思ってた。
樹は歳のせいか若干元気がないように見える。
ちがうか、まだこれから咲くところか。
今年も会えたね。

戻ってくるともう夕焼けの予感。
子供のころに毎日眺めた富士山はあの顔だから、私の富士山はあれ。
この日もいい一日。
ここまで生きててよかった。