いてもいいところ

ここへ来るのは久しぶり。
何度か来てみたけど休みだったり今日はもう閉めると張り紙があったり。
最近は県境超えはNGとか。
ふと行ってみようと思わせたのは青空とやさしい日の光か。
出てきたお客さんがこんにちわーとあかるく声をかけてくれる辺りでどんな店かわかるというか。

入るとマスターがどうぞと手で奥の席を指してくれる。あの時と一緒。
音楽のことだけ書いてたこのブログにカフェとか言い出した最初の話がこのお店じゃなかったかな?自分で書いた自分のブログなのにさがしても見つけられなかったけど。
次はこの窓枠の中にある絵が冷たい雨の中に沈むのを見に来たいなんて思ったんだった。
今日は晴れてるけど。

木を生かしてどころじゃない、あのグネグネが面白いでしょう?
小っちゃくて見えないけど太い柱にかかった3枚の札は本日のケーキ。
前回気づかなくてメニューはありますかなんて言ったら奥さん?があそこにあるでしょなにいってんの?みたいな表情で指さしたとかそういうの忘れないね。
判ってるよ悪気もないだろうし悪い人じゃない。
前来た時はチーズケーキだったかな、嫁さんが迷わずシフォンケーキと言うので自分も乗っかる。
頼んでみると今日はリンゴのシフォンケーキですがいいですか?

リンゴが入って焼いてるのかと思ったけど添えられたジャムがりんご?
おいしかったよ。
またおっさんなのにウインナコーヒーとか頼んじゃって。コーヒーにこだわりのある店みたいなメニューの印象からするとのっかったあのカラースプレーが意外というか、そんなに堅い話じゃなくていいからというメッセージのような。
別な店ではマスターがコーヒーの魅力について0から色々教えてくれた。
ちょっとなんか飲ませてくれながら。
深くて幅広く細かいこの楽しみをみんなに知ってもらいたいという熱意みたいなのが伝わって感動的だった。
なんとなく感覚的外面的にどうこうという話じゃなく、細かいことを論理的に積み重ねてみたいな工学的側面を持っているところが音楽と似てるなと思ったり。
けど、次行くからにはそれに答えられる自分じゃいけないような気がしてその後行けなくなっちゃったよその店。
ものすごく控えめな音量聴いてもいなかったBGMのピアノがふと耳に入る。
クラシックじゃないけど知らないわけでもない。昔、弾いた。
弾いたの意味も色々で、ピアノって鍵盤をたたけばとりあえず鳴っちゃうから弾けたつもりなだけで実際は・・いいから。
今それ聴きたくないよと思ったら静かに耳から離れてくれた。
代わりに何かピアノ…と思ったらあたあの中でこれが鳴ったから。
https://www.youtube.com/watch?v=hlzF_jLZOL4
これを別れのワルツと呼ぶのは知ってたけどその経緯はずっと知らなかった。
有名なジョルジュ・サンドのほうはあんまり興味がないけどこっちの話は忘れられない。
おそらく作者自身もそうだったんじゃないかと勝手に思うんだけど。

窓の外を見たらテラス席があった。
木の枝が貫通しちゃってらとか思って写真を撮ってたらマスターがでてきて
あの扉から外へ出られますよ
写真撮ってる音が聞こえて、店に興味を持ってることが伝わったのかな

マスターこのお店を楽しんでもらいたいんだなというのが伝わったけどいきなりすぎて答えが浮かばず、あーなんて言いながらそのまま外に出・・あれドア開かねー?え?おいあけや‥あ開いた
夏はいいでしょうねきっと。

もうちょっと肌寒いけど。
戻ったらマスターもういなかったけど嫁さんがいろいろ聴いたらしく私に伝えてくる。
いま、一日の中でもわずかしかない日の光が一番いい状態で入るスーパー時間らしい。
そしてそれが一番よく見えるスーパー席はここで・・
すわるとマスターと対面になる。
ああ・・何にも言わなくてもこちらが感じ取ったことってのは伝わるもんでしょう?
写真撮っていいですか?と聞いて

だけど写真には光の魔法みたいなのは写ってなかった。
あっ!とか思ってスマホの電源入れてる間にみんな終わちゃったというのはよくあることだけど。
でもここに座ったおかげでマスターと少し話ができた。
あのグネグネ木はどこから来たのか・・
秋になれば、あの山は赤くなり・・
色んな季節の、いろんな時間の今しかないこの店の表情を楽しんでもらいたいと心底思ってるんだなぁ・・
勝手に考えてた
このお店、雨の日も素敵だと思うんです・・なんていってみると
そう、霧がね・・
そんな会話ができて何だか

満たされたような気持で家へ帰った。
どうも私は昔からの病的疎外感を根に持っているらしく、自分はここにいてよかったんだと確信できると満たされるみたい。
ふと、あそこ行きたいなという店が自分にもあるというのがなんだか嬉しい。