つなぐもの
先日江ノ電沿いを散歩しました。

この写真マニアじゃなきゃ何が言いたいかわからないと思うんですが、2つの車両がその間に置かれた一つの台車を共有しているんですね。
こういうのを連接台車といって小田急のロマンスカーとかフランスのTGVとか・・
そこそこ珍しいものなので撮った写真をぼーっと見ていて思いだした音楽がこちら・・・
マーラーの未完成に終わった交響曲第10番
完成はできませんでしたが無視できないほどの資料が残っていて、補筆されたものが演奏されることもあります。
補筆も色々で可能な限り第三者の解釈が入ってしまうことを避け、ステージにのせるために不可欠な最小限の補強を行なったクック版。
そのほか個人の主観でやりたい放題なものがいろいろあるみたいですが、クック版が好きというかこれしか聞いたことがありません。
どうせなら俺版が聴きたいけど、実現性がないだろう・・・
いろいろ不完全ではあるけれど聴けばこれが傑作になったのは間違いないと確信できるし、また聴かざるを得ない魅力を持っている。
マーラーの最終的な本意ではないなんてことは百も承知で聴くのであって・・もういいか。
嫁さんが浮気をしていることを題材にした交響曲ですが、音楽はそこから出発して普遍的な高みへ登ってしまっています。
いつまでも細かい実話的なものを意識しなくても音楽の本質を聴ける気がする最近は。
悪魔よ、俺にもっと狂気を見せろ!すべてを忘れさせろ!みたいなスケルツォの第4楽章と
いろんな苦しみと葛藤を経て、愛はすべてを超えて許し受け入れる・・みたいなフィナーレの第5楽章。

4楽章の最後
ドイツ語なんか読めないですがちっちゃい文字は多分「完全にミュートされた大太鼓」
最後の音符に向けて書かれている。
悪魔との狂気のダンス・・悪魔の音楽が遠ざかっていくと心臓を一突きにするような重い衝撃音が・・
でっかい字の走り書きは「この意味を知っているのはお前だけだ!あぁ!あぁ!あぁ!」みたいな有名なもの。
この意味とは何をさしているのかというと曲の最後に打ち込まれるミュートしたバスドラ(大太鼓)のこと・・
お前とは・・もちろん嫁さんでしょう。
殉職した消防士の葬儀で追悼の空砲が鳴るのを2人で聴いた・・という話があるんです。
その話を公にしたのはまた嫁さんらしいけど。
でもそれはこの音色のアイディアをどこから得たかという話で今言ってるのはそのことじゃない。
私の心臓を突き刺すこの衝撃の意味をお前はわかっているだろう・・
(歳の差に悩みながらお前を愛してきた・・恐れた通り、若いのと・・)
みたいな意味でしょう。

続くフィナーレの冒頭も同じバスドラの衝撃で始まるように書かれています。
この先この衝撃を何度も聴くことになる・・・
で問題となるのは、
楽譜の通り4楽章の最後に1発鳴らし、またすぐ5楽章初めで1発鳴らして音楽が始まっていくのか、
第4楽章の最後の一撃と第5楽章の最初の一撃は同じ一発が兼ねるのか・・
という問題。
残された資料を整理、補強してとりあえず演奏できるようにしたクック版のスコアは2つの音符があったと思う。
あの版は解釈というものを入れず書いてあるものをステージ上に提示するという資料だからそうなるのであって、クック氏が2回鳴らすべきだと考えていたかというとそれはまた別問題なんでしょう。
愛聴盤のシャイーとウイーン響のものは楽譜通り2回鳴ります。
普通に考えるとこれは共用で1発のほうが自然にも思える・・
クック版もその後の改訂で2度ではなく一度にした可能性に言及していたと思う。
共用1回という録音も沢山あると思う。
私は音楽的にここは一回の衝撃が両者を共用するのが自然だと感じます。
でも2回鳴ったからけしからん、なんていちいち思わない。
そんなんじゃないでしょうこれを聴くというのは・・
録音の中にはこのミュート大太鼓をとんでもない巨大音量で演奏している物があります。
まぁ、すべての発端となる耐え難い衝撃だからね・・積極的な解釈でいいと思う。
でも個人的には6番ででっかいハンマーを振り回して喜んでるのと同じく、過剰な演出無しでも十分な音楽なのに・・とかちょっと思ったりして。
楽譜、f ひとつだよね。そりゃffffよりも大きなfも当然あるけどね。
交響曲第1番のフィナーレで失恋砲をドカドカ打ち込んでいた若いマーラーとは違う、大人の愛の交響曲なんだからさこれ。
こういうと真っ赤になって「お前はなにもわかっていない!」みたいな親父はまだいっぱいいるんでしょうか。
ついでに、
クック版を聴いていると、この手前打楽器だけのワルツとなりティンパニが旋律を担当してとても面白い部分です。
スケッチにもPk(?)と書いてあってちゃんと作者がスケッチの段階からティンパニを想定していたことがわかる。
音源はあったけれどこの曲に関してはスマホとYoutubeじゃ聴けないとのではないかと思ったりしてます・・。

この焼豚屋さん、道路沿いではなくて線路沿いにあります。
「今電車来るから店の中で待ってて・・」みたいな・・
今回も行こうかと思ったけど嫁がいい顔しないのでやめた。
世間の誰が何をどう考えていようがどうでもいいけれど、
嫁の意向は大事にしないと・・
Comment