2018/01/13

嘘も方便とオーディオ原理主義

また海に行きました。
先週とはまた全然別なところ。
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不定形な波を見てると飽きない。
波の音っていうのもいまたいいですよねぇ。
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すごくいい砂浜で、広くて、きれいで、雲に遮られながらの微妙な日の光もいい感じ。
これはスマホで適当に撮っただけだから何だかわからないけど、
いい写真や絵は波の音、風の冷たさ・・潮のにおいまで感じたりするものがありますよね。
匂いまで・・
とてもいいところだったけど近くに汚水処理場があるらしく、海がものすごく下水くさいの。
波が砕けて飛び散るから辺り一面の空気も汚水の臭いに染まっちゃって・・
よかった臭いまで撮れなくて。
何でも全部伝わればいいってもんじゃないですよね。

昨日のデュトワ/モントリオール響のサンサーンス交響曲第3番のCDについて・・
・・この先はクラシック音楽系オーディオ趣味をやってる人でないと?な感じかもしれません・・
この録音が行われたのが1982年。レコード会社はこれから民生品もデジタル化することを踏まえた録音をラインナップしようとしていた。
装置の性能が上がることに対応するわけだけれど、その主眼はただリアルを追求することではなくいかに聴き手がよりよく音楽を聞けるようにするかという昔からあった考えが貫かれていたと思う。
一部オーディオ原理教の経典”原音再生”とはちょっと違うと思う。

この録音30年前からずっとジャケ写は
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これだと思う。
トランペット管も持つ巨大ファザード・・
教会の壁一面を埋め尽くし・・
数千のストップを持つ5段鍵盤・・
64フィート管・・
みたいな超巨大ロマンティックオルガンを思い浮かべます。
実際聴いてみてもアダージョはオルガンの分厚い低音とビロードみたいな和音があたりをすべて埋める。
有名なマエストーソの冒頭は、オケの乗ったステージの後方上部から巨大オルガンの圧倒的、重厚、荘厳、華麗な和音が炸裂。
みたいな(当時の)オーディオマニア御用達な音作りとなっています。

こういうCDはみんなただの記録じゃなくて誇りをもって制作された録音作品なんですね。
ジャケットには作曲者演奏者だけでなく録音年月日の他プロデューサーやエンジニアの名前、録音会場などがしっかりと明記されています。
この録音はモントリオールの聖ユスターシュ教会で録られている。
しらべてみるとこんな写真を見ることができた。
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シンプルな2段鍵盤のコンソールと
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飾りっ気のない実用的なオルガンが
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協会背面の3階席みたいなところにこじんまりと・・・・

ジャケ写全然違うじゃねーかよ。
・・・いや、別にいいんですよそんなの。
商売だもん売れないようなそっけない写真じゃ勝負できないもんね。

そもそも協会なのでステージなんかない。
録音時は椅子をどけてそこにオケを展開するので想定される客席というのもない。
CDの中にあるあの世界は作られたものなのであって、実際には存在しないのだ。
実際、オケとオルガンは同時に録らずにオケの演奏をヘッドフォンっで聴きながらオルガン奏者が別に演奏する・・
とかやって後でミキシングしたものだと思う。
オルガンはオーディオマニアが期待するような超低音が出るような巨大管も持ってない。
マイクの配置とミキシングでどんな風にも聴かせることができるんですね。
芸劇なんかで聴いたあの大地の底から振動しているような超低音が聞こえないのは自分の装置のせいかと思ったりもしていましたが、そもそもそんなもんが出るオルガンじゃないんだろうしあれでいいのかも。

同曲の別な有名盤はたしかオケはアメリカで、オルガンはヨーロッパで録ったのもをミキシングしてみたいな内容で発売されていたと思う。
原音再生を唱えるオーディオ原理主義者から見ると犯罪的な内容なんじゃないかと思うけれど、寧ろそれを宣伝文句にして売ったんじゃないかなぁ・・
CDを買ったのは中学生くらいか・・そこそこのオーディオ装置を持てたのはもっとずっと後、さらにこの曲を実演で何度か聴き、CDみたいには聞こえないんだと知ったのはもっとずっと後。
この曲のLIVE版なんかだとオルガンをうまくとらえきれていないものもある。実演を思い出して好ましく感じる反面、細部を聴きとろうとするとストレスを感じたりもする。

で何が言いたいかというと、別になにもなくて。
いろんな考えや手法があっていろんなものがあることを知り、
それぞれを楽しめばいいんでしょう。
でもね、これがなかなか難しい。

今日も寒い。

コメント

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こんばんは。
友人にアマチュアのオルガン奏者がいるんですが、その人が出演したキリスト教会の慈善コンサートの演奏を聴いたことがあります(バッハのBWV582)。オルガン自体は写真のよりかなり小さくて、洋服ダンスを少し大きくした程度のものでした(オルガンの箱の中に入って空気を送り出す担当の人が必要なもの)。私はそんな小さなオルガンを目の当たりにしたのは初めてだったのですが、演奏はもう豪壮なもので、大家の録音も吹っ飛びそうでしたね。友人曰く「オルガンはストップ操作次第で規模はあまり関係がない」んだそうです。

私個人的にはサンサーンスの3番だとカラヤン盤が基準になっています。悪趣味と言われているらしいですが。

Re: タイトルなし

quietplaceさん、こんばんは
それは素晴らしい体験ですね。
私は楽器もちゃんと弾けませんが一度本物のオルガンを弾いて見たいです。
一生かなわないかなぁ・・
箪笥サイズのオルガンいいですね。
送風機が電動化されていないんですか?なんかそのあたりもいいですね。

カラヤン盤は効いたことがないんですは、悪趣味と聞くと逆に聴いてみたくなりますね。

ありがとうございました。

こんにちは。
サン=サーンス好きの木曽のあばら屋です。
第3番は、このデュトワ盤が刷り込みです。
しかしサン=サーンスの本質は粋で小洒落たエスプリと
ちょっと皮肉が効いたところにあるんじゃないかなあ・・・。
なのでこの曲のコケオドシ的大音響勝負なところは、
あまりサン=サーンスらしくないぞ、などと思ってしまいます、名曲ですが。

もちろん私の勝手な考えです。
サン=サーンスはオルガニストでしたから、
「これこそがサン=サーンスの真髄!」と思ってる方もおられるでしょうね。

Re: タイトルなし

木曽のあばら屋さん、こんにちは
この曲がアメリカの大きなホールでハイパワーオケと大オルガンでやったとか
オーディオ名曲になったのはオーディオが出てきてからかもしれませんね。
フランスの指揮者はご指摘のような演奏を聴かせてくれますね。
名前忘れちゃったけどコンサートでもこの曲だ派で音楽じゃないんだよっていうのを聞かせてもらっって感動したことがあります。

私は両方あるべきでいろんな演奏を聴きたいです。
というかこの曲はいろんなタイプの演奏が聴けるようになりました。
これしか聴けないと固まっちゃった曲も多いんですが。

ありがとうございました。

録音音楽

こんにちは

私は生で聴く音楽と、録音物の音楽は区別して考えています。
不自然でもいけませんが、現実の演奏会で聴きづらいところもしっかり聴けるような、結果としてSPから望ましい再生音が出てくるのを期待します。
過去に自作でサブウーファーを作ったことがあり、パイプの最低音で部屋の戸が揺れたときは圧巻でした^^

Re: 録音音楽

michaelさん、こんばんは
演奏会とは違う神の耳みたいな視点で音楽を聴けるところが
録音芸術のいいと悪露というか存在意義というか楽しみというか・・・ですよね。
サブウーファー自作したんですね・・すごいな。
むかしスーパーウーハーを入れたことがあって、バスドラなんかに驚くような効果が出たんですがあれ、
集家の影響もきっと相当あったでしょうね。
いまは怖くて低音方向の拡大はできません。

ありがとうございました。