旧線トンネル

列車を見送った補助機関車は引き上げ線で休む。
運転士さんは駅舎に併設の詰め所みたいなところに入っていった。
ちっちゃい詰め所みたいなのがかわいくて面白い。

向こうに見えるトンネルは現在も現役でレールは右手へカーブしていく。
あそこが新旧線の切り替えポイントで元々はここへ向かってまっすぐレールが敷かれ歩いてきたこのトンネルを通過していたわけでしょう。
旧線跡はこの先ダムの中腹へ飲み込まれて消える。

旧川根市代駅の駅名標が現存。
保存というか無造作に・・こんな話興味があるのは読んでくれる方の5%くらいでしょうかね。

雨上がりみたいな森とダム湖に挟まれかなりの湿気と暑さ・・
ところがトンネル付近に近づくとものすごい冷気を感じる。
あまりの温度差でトンネル内は霧で満たされ真っ白だ。

振り返ればこんな感じ・・
足元には

レールが残っていた。
これを見て面白いと思う人も入れば、なんとも思わない人もいるだろうし、じゃまだ危ないと怒りだす人もいるでしょう。
人の考えや感じ方は驚くほど大きく違う。
子供のころからそのあたりにうろたえてそのたびに内側へ引っ込んだ記憶が・・
いまも、そこがうまくやれない。
いいかそんなの。

懐中電灯があるからいいけれど、結構不気味。
一人だとなかなかな感じかも。
なんかパタパタしてると思ったらコウモリだった。
ケケケ・・とかなかなか鳴き声かわいいのね。
真上から聞こえるから見ると、

沢山ぶら下がってる。
結構かわいいよ。
夏休みを控えてかキャンプ場へ来る子供のためにだろう

肝試し的な仕掛けが作ってあった。
バケツとかなんとか廃品利用みたいな手作り感がいいよね。
家庭用のセンサーライトのセンサー部分を流用しているようで人が近づくとまず光る。
先ほど嫁さんとキャンプ場のおじさんはここで盛り上がってた。

ちょっといったここにも。
小学生のころ、担任の先生の親戚一同が共同所有するという別荘にみんなで泊まりに行った。
肝試しと称して近くのお寺のお墓を歩いた記憶があります。
水子供養という言葉をそこで覚えた。
もうすでに一人浮いてるというかはぐれかけてたけど、数少ない楽しい思い出として35年くらいたった今でも忘れない。
今でも別荘があった町の名を聞けば耳が行くし、近くを通るとその別荘があったあたりに視線がいく。
この手作りな光も、50年後とかに誰かの記憶の中で光り続けたりするのかもね。

この辺りは素掘り。
スマホで撮るとゴッホの絵みたいだな。
歩いてると、結構後ろの方で人の足音が聴こえたりするんだよね。
!っと振り向いても真っ暗闇。
誰もいない。
自分の足音がこだまして帰ってくるんだろうけど、
こういうのなんでもクールに受け止めちゃったら音楽なんか聴いてもつまんないんじゃないかなぁ・・
ちがうか人それどれか。

トンネルを出たところには子供むけにかこんなチャイムみたいなものが作ってあり、
いい歳をした夫婦が叩いて遊ぶ。
https://www.youtube.com/watch?time_continue=3600&v=E7y0_Z3uXts
マーラーの交響曲第6番のフィナーレにこういうのが出てきます。
パソコンとYoutubeとかだちゃんと聞きとれないかもしれません。
楽章冒頭の楽器名のところに注意書きへの誘導があり、
きちんと調律されていない複数の音程の鐘。不規則に打ち鳴らされあるときは・・
みたいな指示があったと思う。

ギザギザみたいなのが続いていますが最初のギザギザは舞台裏のカウベル
遠くで(舞台裏で)という指示があり、その次一つ上の段がこの鐘。
なんというかこれが鳴っている間異様な虚無感というか、
実時間と直交する虚数方向へ時間が進んでいるような・・
そんな世界となる。
マーラーの交響曲第6番は、何度も大きな悲劇に襲われもう虫の息のとなっている人間に運命は止めの一撃を刺してその死を見届ける。
という超絶ネガティブ音楽だ。
かけや(餅つきで使うみたいなでっかい木のハンマー)が演奏中に振り下ろされる所が有名で、そんな話ばかりが馬鹿の一つ覚え的に繰り返されがちなところが作曲後100年くらいたってくるとかえってじゃまな気もするんだけれど・・
目の前にあったはずの明るい光が一瞬で暗黒の悲劇に代わる・・と言うのがコンセプトなのではあるけれど、
別な視点で見ればこの交響曲の中には何度も悲劇に立ち向かって打ち勝ち、死の直前圧倒的な勝利を収める人間の姿も描かれているのである。
何かできるのは生きている間だけ。
俺だってまだ人生終わったわけじゃないし、なんか知らないけど頑張るかもしれませんよ。
キャンプ場には一人バイクで来た人がテントを張っていた。
馬鹿みたいにならされるチャイムにうるせーなとか思っていたかもしれない。
ごめんね。

その後ろをさっきの機関車が単機で登ってゆく。
最終列車を迎えに。
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