鬱が消えた店

鬱々としていて行き先を決めることもできないまま出かけた。
車の窓を開けて風に当たり青い空や木々の緑を目にしていたら前から気になっていた遠くのカフェに行ってみたくなった。
いい感じのドアを開けるとお客さんいっぱいの店内もいい感じ。
中へはいりまし・・・あ、ご飯ですか?もう終わっちゃったんですよ。
そりゃそうですよね。間抜けな時間に来てごめんなさい。

探すとすぐ近くによさそうな店。駅前は最近区画整理が終わったみたいで妙にこぎれいでだだっ広い空間が開けていた。
かなり新しいように見えるビルの・・
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あなんだあれ面白そうじゃない?
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こういうとこって入ってみると大失敗な可能性も結構あるよね。
でもここは行けそうな気がする。
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ドアを開けると外観とつながったイメージの内装と満席のテーブルが目に入り、
カウンター・・と思ってると
カウンターでいいですか?とやや冷たい印象の声。
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二人分のコップが全然違うこの感じがいいでしょ?
建物新しいはずだけど40年前からこのままな感じの世界が作ってあり、何か並ではないものを感じる。
さっきのカフェいけなくてよかったなぁ・・こっちのが面白いしなんて思ったりして。
この時点でまだ何にも喋ってないけど、音楽に対して並み以上の考えがあるらしいことはもう伝わってる。
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メニューはこの手のネタ系店にありがちなキーマカレーとパニーニしかないのかよみたいなのじゃなく、うまそうな料理や飲み物が多彩に展開するちゃんとした食い物屋さんだった。
ランチもう終わっちゃいましたか?なんてわかってんのに聞いてみると
もう終わりですとまたしてもつれない感じで・・
はーいなんて言いつついらんこと言って失敗したかななんて思っていると突然、
あれまだすぎてない?
なんて聞いてくるから・・いや時間過ぎてるでしょなんてなんで俺が返してんの?
でも硬くなりかけた心はちょっと解放。

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嫁さんのロコモコは葉っぱがなくてよくみるのとはちょっと別ものらしい。
とにかくおいしかったそうだ。
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私の焼きカレーもおいしいよ。
ちょっと乗ったマヨネーズがいいいのねこれ。
なんて思いながら食ってるとママが話しかけてきた。
どちらからですか?から始まって・・
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よく遭遇するけれどここもプロのミュージシャンを呼んでライブをよくやるという。
テレビに出るようなメジャーじゃないけれど・・
いや分かるよテレビに出てくるとか超絶有名とかは あまいいや。
聞く前から壁じゅうサインだらけなのを見ればそうかなと思うわけだけどやっぱりそういう事ですよね。
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トイレの中・・

オーナーの妹さんだっか・・昔なにもない駅前に始めた喫茶店がルーツでもう50年以上になるそうだ。
区画整理で新しいこの建物に移って10年くらい。
音楽関係のことのほかいろいろ内装系は息子さんが自分でやっているという・・
あの暖簾の向こうから一瞬現れた背が高くてアフロの・・いかにもアーティストっぽい人がそうでしょう。
最初に出てきたときはにらまれた気がして目をそらしちゃった・・厨房暑いんでしょうね冷蔵庫の中にあった水を飲んで戻って・・
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これじゃなく、歌ってたスピーカーは山水って漢字のロゴが入った古いスピーカー。
ルーツになった喫茶店時代からずっと歌っていたものだそうだ。
アナログのターンテーブルが置いてあったりもするけど、BGMの音源は盤じゃなくてPCからだった。それ自体は今時少しも珍しいものじゃないんだけど周りの景色とギャップがちょっと面白かった。
昔は自主製作盤なんか作って借金とともに消えていった人がいっぱいいたんだろうけど、いまは個人が安価で簡単に全世界に向けて発信できる時代なんだよね。食ってけるかは別として。
普段聞かないから何にも語れないけれど、でもなんかこういいなーと思って聴いてた。

その息子さんが登場して
この人ずっと嫌そんなんじゃないすとか謙遜してたけどすごくアーティスト気質な人らしく創作意欲が止まらず店の装飾を常につくり続けているらしい。きっと来るたびによく見るとどっかが変わってたりとかするんだろうね。
皿を洗いながらこのスポンジ使ってペンキを塗ったら・・とか思いついて夜にやってみたら・・みたいな話が延々面白い。
外に貼ってあったトタンの波板も自分で貼ったそうだ。
そういう職業の後輩が解体品みたいなものを長年プールして降りてくれたんだそうだけど、職人だからちゃんと張ろうとしちゃう・・ちゃんとはっちゃダメなんだそうで・・なんか音楽みたいだなそれ。
デザインでも音でも味でも盛り付けでも狙いすぎて変な形にしちゃったり変なもんいっぱい置いちゃって残念な感じになっちゃてるのをよく見るけど、いい感じを自然に出せる人というのが・・こういうとこにぽっといたりするんだよね言わなくても否定してもアーティストな人。
いろんなものが多層的に積み重なっているけれど、一本貫いたトーンみたいなのの上に乗っかってるところがいいんじゃないかと思った。
何より楽しそうだし、聴いてて自分も楽しかった。
始めはつっけんどんな印象もあったお母さんももうゲラゲラ笑っちゃったりして・・


https://www.youtube.com/watch?v=yy8qFYmAE_s
3つ一組のこの曲の邦題は干からびた胎児。ちょっと誤訳気味らしいですね。
それにしても一曲目はナマコの干物。
ナマコの干物がいいいたいんじゃなくて聴き手が聴く前に題名を見てわかったような気になることをおちょくってるんだと思う。ちょっとしたヒントがあったほうがよりよく聴ける場合もあるけどね。
いろんな既成概念を排除しようとし、もう楽譜に拍子記号も小節線もないんだけどこの曲の最後
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終わると見せかけてしつこく終わらないというネタをやってて適当に笑うところなわけです。
サティらしいなというところだけどでも、
このネタはサティよりずっと前にベートーベンもやっていたりするわけだ。それもかなりまじめで重要な曲で。
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ベートーベン交響曲第5番、フィナーレの終わり。
古典派の交響曲なら5小節目で終わってもおかしくないと思う。
もうちょっと派手に終わるとして2段目まで・・もうその後は明らかにネタなわけですよ。
運命でも苦悩でもいいけどネガティブに打ち勝ったという勝鬨をこれ見よがしに続けて全然終ろうとしない・・まじめで素晴らしく感動的な内容であると同時に思いきり冗談でもあるわけ。
そここそがベートーベンなわけでしょう。
こんなの書いても興味を持って読んでくれる人はあんまりいないのかなと思ったりもします。他の話も含め嫌な野郎だなくらいに思われてるかなとも思う。でも私は自分でしかないので仕方がない。
それだけにコメントもらったり拍手ボタン押してしてもらえたことが俺も生きてていいのかなくらいうれしかったり。
私のブログと一緒にしちゃいけないだろうけど、
私がこの店が気に入ったという事が十分に伝わったところでお母さん、きっとこの店見て嫌だという人もいるはずですよと言い出す。
そんなことないでしょ・・
いや受け入れられないという人がいるよ・・
そうだね、でもみんなに好かれる必要なんかないんだよね。
でもそこには逆に自分たちへの自信と信念みたいなものが透けて見え気がする。
これが好きという人がちょっといて食いついてればいいんだよねきっと。
いいなぁ。
夜はいろんなとこが光って今とは違う感じだから・・と夜の店も見てほしいみたいなことを言ってくれる。
来るよ見てみたいし・・

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小一時間話し込んでこのお店を出た時、頭の中に立ち込めてたお前は失敗だから死んじまえみたいなのがすーっと消えてなくなってた。
なんだ俺はただ人としゃべりたいだけなのか?

ほんとは昼間っから酒も飲めるよみたいな話や夜の店と聞いた頭は自動的に閉鎖体制に入るし、あとで見たお店のWEBサイトのバンドの人やお客さんが楽しそうに集まる写真・・とても素敵な写真・・を見てあーいいなーと思うのと同時に病的自己防衛反応みたいなのが来て手が勝手にページを閉じてしま・・・

でも、この時このお店に行けてほんとによかった。
ありがとう。

ちょっと走って
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牧ノ原台地に登ってゆくところ。
茶畑がきれいだった。
気分が良ければ送電線鉄塔までいい景色の一員に見える。
でも気分までは写真に写らないらしく、あのとき見たのとなんか違うかな?
出かけてよかった。

Tag:サティ  Trackback:0 comment:0 

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2022年11月からピアノ習い始めました

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