家族について

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山小屋に明かりが灯ってた。

晩飯がそうめんだった夜、嫁さんがみかんのせる?とか聞いてきた。
みかん?
い、いらない。
嫁さんのそうめんの上には缶詰のみかんが・・
昔見たことがあるような気もするその景色は私にはちょっと受け入れがたいのだけれど、嫁さんは何だか楽しそうだ。
それでいじゃない。

楽器のレッスンを受けている私はめちゃくちゃで先生に心理的負担をおかけしていると思う。
先日のレッスンで急に
そろそろ奥さんが文句を言いはじめていないですか?
え?
ああ、そこが気になるんだ・・
前にもどうにもならない人がいたらしく先生は感情が高ぶるとその人のことを批判して見せるのだけれど、どうもその人の奥さんが先生にこれだけ通っているのにいつまでたっても上達しないのはどういうことなのかと詰め寄ったようだ。
それは筋違いとかいうのは他人のことでどうでもいいから置いておくとして、
うちの嫁さんは私に対してもそういう愚痴や嫌味みたいなことは間違っても口に出さないし、そもそも考えないと思う。
考えてみればその一点だけでも私は幸せだと思った。

合奏したいとか言いながら電子ピアノを弾いてみせたりして・・
本気なのか冗談なのか知らないけれど、いつか本気で合奏がで来たら・・


https://www.youtube.com/watch?v=lsx8dMG4qzc
バルトークのピアノ協奏曲第3番は、明るく優しく健全・・彼の他の曲に聞こえる原始、野生、グロテスクみたいな音楽とは全然違う。
窓から差し込む光、テーブルの上の花瓶には花・・なんかそんなものを感じながら・・

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バルトークの子供うち音楽の専門家にはならなかったらしい人?が作曲家としてのバルトークじゃなく自分の知る親父を書きましたという本を持っている。
ちょっと読んでそのままになっていたものを引っ張り出してきて開いてみると、偶然この曲について書かれた部分に当たった。
最後の夏、仕事場に積まれた楽譜の中からこの曲をスコアみせてもらった。
「母さんへの誕生日プレゼントだから、母さんには内緒だ」

医者も家族もそれを伏せていたけれど、この時作曲者は死の病にかかっていた。
オーケストレーションももうすぐ完成、スコアの最後の17小節を埋めるだけというところで医者から入院の指示を受け救急車で運ばれ、その後も肉体の自由は奪われて最後の小節を自分で埋めることは永久にかなわなかった。
それでも何とかしようとした親父の指示をうけ残り17小節の小節線をこの息子さんが引く。
さらにその後ろに全曲の終止であることを示す終止線を親父が引き・・・本当に完成はもう目前だった。
当時もう生命維持装置の類があったらしく、本人は延命処置に対して不満と抗議の意思を示していたという。
頭の中で完成していただろういくつもの曲をこの世に置いていけないことを悔しがってもいたようだ。
スケッチや略記による指示によってこの曲はほぼ完成していたといえ、ずっと手伝っていた人の補筆によって問題なく演奏される。
最後にどうしてもやりたかったことは嫁さんへのプレゼントを完成させることだった・・

単純に芸術家としての愛情表現というだけでなく、すでに有名となり作品の演奏機会や依頼が増えていた自分の作品を演奏することでの嫁さんの具体的な経済的支援みたいなことを考えていたらしいところにこの人らしさがあるとも思う。
思うけれどそういうことよりこの曲自体が嫁さんへのメッセージなんでしょうね。

感動的な話と音楽で頭が満たされた次の日、
仕事で私より少し若く明るく快活な人と長時間同行。
一生懸命雑談のネタを持ち出して場を作ろうとしてくれるのに答えていきたいんだけれど、私は普段から情報遮断しすぎているから何言ってんだかわからなくて会話をつづけられない。
流れてくるテレビの音声にイライラしてることを面に出したらいけないとか思ったりもしながら・・
昔から分っていることで今更驚かないし、もうしょうがないんだけれどダメね俺は。
多分この先人の輪に入ってみんなと楽しくというのは死ぬまで来ないと思う。
そんな私にも奇跡のように嫁さんがいて、犬がいる。
犬は隣で雨音に向かって吠えた後、今はひっくり返っていびきをかいてる。
私にはこの世に置いてゆくものは何にもないけれど、
その時までは少しでも有意義にというか適当に楽しく生きたいと思う。
有意義には標準的正解に近づくということではないというところを間違えないようにしないといけないと思う。
なかなかうまくはいかないし、邪魔もたくさん襲ってくるけれど。
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散歩は3人が楽しいね。

Tag:バルトーク  Trackback:0 comment:7 

Comment

さち URL|
#- 2019.07.24 Wed22:06
unagiさん
こんばんわ!
灯りがともった富士山初めてみました。
青い富士山綺麗ですね。富士山の手前の山に山梨方面から登った時は、富士の裾野ってこんなに広いんだとびっくりしたものです。
当たり前ですが、富士山にも夜が来るのですね!
マーニ URL|一番大切
#4bWz8s1g Edit  2019.07.25 Thu07:38
世界中で一番大切なモノとして自分以外を示す事の出来る人は幸せだろうと思います。なるべくなら、私のその仲間入りがしたいと、最後の瞬間までできるだけの努力をしたいと思っています。

unagiさんの大切なモノ、奥さんとワンチャン、、音楽と景色。
素敵なことではありませんか!
万一、ヒトリ逝く時に幾つかの自分より大切なモノ、
確かに残して行けるのですから、
hobohobo URL
#- 2019.07.25 Thu07:57
極貧で死の病にかかっていた人の作品とは思えないですよね。
未完だった第3楽章は、何度聴いても血が騒ぐ。
芸術の魔力のようなものを感じます。
 |管理人のみ閲覧できます
# 2019.07.25 Thu22:51
このコメントは管理人のみ閲覧できます
unagi URL|Re: タイトルなし
#- 2019.07.26 Fri08:30
さちさん、おはようございます。
富士山の山小屋が光って見えるとああ夏だなと思います。
もっと近くに行くと懐中電灯を持った人が行列になっているのが
光の筋になって見えてびっくりします。
暗闇の中で見えないからって富士山が変なカッコしてたら面白そうですが、
いつもちゃんとあそこに座っているみたいです。

ありがとうございました。
unagi URL|Re: 一番大切
#- 2019.07.26 Fri08:32
マーニさん、おはようございます。
大切なものがあることは幸せですね。
本当にそう思います。
本当にダメな時は、何かを大事に思ったり、好きだと思うことができなくなります。
幸せなまま人生を過ごせたらいいですよね。

ありがとうございました。
unagi URL|Re: タイトルなし
#- 2019.07.26 Fri08:35
hobohoboさん、おはようございます。
いい曲ですねこれ。
白血病は、裏で進行しつつ表向き一時良くなったかのような時間をくれるんだそうです。
息子さんによると、貧困にあえいではいなくて充実してよしこれからという時間が
わずかながらあったようでした。
こういうものを残せる人は永遠の命を得ているともいえると思いますよね、

ありがとうございました。
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2022年11月からピアノ習い始めました

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