思い出も思い入れも沈まない
行こうと思った遠くの喫茶店に行きそびれ、カフェなんかあるわけのない海沿いの道を延々走ってきて、

やってるように見えたここに入ってみると男性が二人で話し込んでる・・
あれなんか違うな?事務所?しくじった?
どうぞー
あ、いいですか?
男所帯的な乱雑さを感じ一瞬ひるんだけれど丁寧な言葉にここで休んでいくことにする。
このあたりはアニメの聖地らしくどこの店に入ってもそれ系のものがあふれてたりして、ここにも声優さんが来たのかサインが貼ってあったり。一人いたその系お客さんはもうバスの時間がとか言いながら出ていった。
でもこの時の私にそこはあんまり関係なかった。
メニューを見てると営業時間が書いてあり・・
あ、もうラストオーダーの時間もとっくに過ぎてもう閉店の時間かぁ・・
嫌な顔もせず迎えてくれて・・申し訳ない・・ありがとう。

ごゆっくりと言いかけた店主に時間のことを詫びるとすぐに話が始まり、この店への強い思い入れが語られる。
かつてここに古い客船が係留されていて、超高級ホテル、レストランとして使われていました。
知ってますよ・・この近くですよね?
近くじゃなくてここです・・
あ・・そうだっけ。
地元では有名だったその船のことは私も幼い時からなんとなく知ってはいたし時々話題にしたような気もする。
けれど客船で食事とか近寄りがたいイメージもあって行ってみたのは結構な歳になってから、嫁さんとだった。
美しいその船は戦前に作られてお金持ちを乗せ世界中を回った名船、食事のあと船を見て回ると私にも歴史と深みみたいななんかを感じさせてくれたのを覚えてる。
それからすぐ、ニュースになるような不正の影響などで経営母体が傾くと施設は閉鎖。
船はどこかへ売られてえい航中に浸水、いったんは港に入ったものの助からず沖に沈んでしまった。
ニュースで見た記憶では港に沈まれては困るから助からないなら沖へ出せという指示みたいなのがどこか監督機関みたいなところからあったような気がする。
古い船だしそもそも大丈夫なのかみたいな話はあったそうだ‥というかだれでもそう思うような気がするし、なんであんなこと・・とこんな話を店主に向けてみると、さえぎるように店主の一方的な話が返ってきたのでやめた。
もしかすると自分の大切なものに対しお前そんなこと言うなということだったのかな?
この人その船とどういう関係にあったかはわからないけれど、それが忘れられてしまうことを何とかして食い止めたいという強い願いを持っているようだ。
一見、物がごちゃごちゃ置いてあるように見えてしまったのは店主が集めてきた船にかかわる大量の展示物であった。
最近アニメのせいでやたらに人が来るようになり、SNSかなんかでこの場所の知名度が爆発的に高まったそうだ・・
それ自体は嬉しいようなんだけど、
だけど来るのは男の子ばっかりで・・・
そうですか・・・
それじゃだめですか・・
https://www.youtube.com/watch?v=FOT3rZJ4vtw
悲しい伝説の残る古城には今も城を守ろうとする武者の幽霊が・・みたいな話を思い出したりして。
幽霊なんて言っちゃったら店主に失礼だけどその強い思い入れに・・
お礼を言って帰ろうと思うと海辺もみていってくださいという。

なんかこう、寂しげな夕景とともにちょっとシュールな・・
店内に置いてあったアニメの本の表紙はここのこのテーブルだった。
桟橋もなくなっちゃって、ここにあの船がいたとはもう想像もできないな。
嫁さんと初めてか2度目かそれくらいにあった日にもここへ来た。
たくさんの電球できれいに飾られた船が海に浮かぶのを見ながら・・・
私にとっても思い出の船。
写真があったはずと思い探すと、思い切って食事をしに来たときの写真や動画が出てきた。
昨日のことのようで、もうあれから15年か。
確かに、間違いなくそこには若い私と嫁さんがいて、笑ってる。

すべての写真に私か嫁さんか二人がでっかく写っていて、風景や情景みたいな写真は一枚もない。
自分や他人の姿に嫌悪感や敵意をむき出しにして生きていた記憶があるんだけれど、この時こんなだったんだな。
俺の人生も何にもないまま無駄に時間が過ぎ去ってきたわけじゃないんだと教えてもらう。
背後に写る重厚な内装や装飾品を見ながらこれらはもう海の底にあって二度と会えないんだと思うと泣けてくる。
でも私の人生はまだ海に沈んじゃってないから。
ありがとう。

やってるように見えたここに入ってみると男性が二人で話し込んでる・・
あれなんか違うな?事務所?しくじった?
どうぞー
あ、いいですか?
男所帯的な乱雑さを感じ一瞬ひるんだけれど丁寧な言葉にここで休んでいくことにする。
このあたりはアニメの聖地らしくどこの店に入ってもそれ系のものがあふれてたりして、ここにも声優さんが来たのかサインが貼ってあったり。一人いたその系お客さんはもうバスの時間がとか言いながら出ていった。
でもこの時の私にそこはあんまり関係なかった。
メニューを見てると営業時間が書いてあり・・
あ、もうラストオーダーの時間もとっくに過ぎてもう閉店の時間かぁ・・
嫌な顔もせず迎えてくれて・・申し訳ない・・ありがとう。

ごゆっくりと言いかけた店主に時間のことを詫びるとすぐに話が始まり、この店への強い思い入れが語られる。
かつてここに古い客船が係留されていて、超高級ホテル、レストランとして使われていました。
知ってますよ・・この近くですよね?
近くじゃなくてここです・・
あ・・そうだっけ。
地元では有名だったその船のことは私も幼い時からなんとなく知ってはいたし時々話題にしたような気もする。
けれど客船で食事とか近寄りがたいイメージもあって行ってみたのは結構な歳になってから、嫁さんとだった。
美しいその船は戦前に作られてお金持ちを乗せ世界中を回った名船、食事のあと船を見て回ると私にも歴史と深みみたいななんかを感じさせてくれたのを覚えてる。
それからすぐ、ニュースになるような不正の影響などで経営母体が傾くと施設は閉鎖。
船はどこかへ売られてえい航中に浸水、いったんは港に入ったものの助からず沖に沈んでしまった。
ニュースで見た記憶では港に沈まれては困るから助からないなら沖へ出せという指示みたいなのがどこか監督機関みたいなところからあったような気がする。
古い船だしそもそも大丈夫なのかみたいな話はあったそうだ‥というかだれでもそう思うような気がするし、なんであんなこと・・とこんな話を店主に向けてみると、さえぎるように店主の一方的な話が返ってきたのでやめた。
もしかすると自分の大切なものに対しお前そんなこと言うなということだったのかな?
この人その船とどういう関係にあったかはわからないけれど、それが忘れられてしまうことを何とかして食い止めたいという強い願いを持っているようだ。
一見、物がごちゃごちゃ置いてあるように見えてしまったのは店主が集めてきた船にかかわる大量の展示物であった。
最近アニメのせいでやたらに人が来るようになり、SNSかなんかでこの場所の知名度が爆発的に高まったそうだ・・
それ自体は嬉しいようなんだけど、
だけど来るのは男の子ばっかりで・・・
そうですか・・・
それじゃだめですか・・
https://www.youtube.com/watch?v=FOT3rZJ4vtw
悲しい伝説の残る古城には今も城を守ろうとする武者の幽霊が・・みたいな話を思い出したりして。
幽霊なんて言っちゃったら店主に失礼だけどその強い思い入れに・・
お礼を言って帰ろうと思うと海辺もみていってくださいという。

なんかこう、寂しげな夕景とともにちょっとシュールな・・
店内に置いてあったアニメの本の表紙はここのこのテーブルだった。
桟橋もなくなっちゃって、ここにあの船がいたとはもう想像もできないな。
嫁さんと初めてか2度目かそれくらいにあった日にもここへ来た。
たくさんの電球できれいに飾られた船が海に浮かぶのを見ながら・・・
私にとっても思い出の船。
写真があったはずと思い探すと、思い切って食事をしに来たときの写真や動画が出てきた。
昨日のことのようで、もうあれから15年か。
確かに、間違いなくそこには若い私と嫁さんがいて、笑ってる。

すべての写真に私か嫁さんか二人がでっかく写っていて、風景や情景みたいな写真は一枚もない。
自分や他人の姿に嫌悪感や敵意をむき出しにして生きていた記憶があるんだけれど、この時こんなだったんだな。
俺の人生も何にもないまま無駄に時間が過ぎ去ってきたわけじゃないんだと教えてもらう。
背後に写る重厚な内装や装飾品を見ながらこれらはもう海の底にあって二度と会えないんだと思うと泣けてくる。
でも私の人生はまだ海に沈んじゃってないから。
ありがとう。
Comment
いつも素敵な写真と音楽楽しみにしています。
いいお店に巡り会えたんですね。感じの良い店主で嬉しかったことが伝わってきました。
なかなかコメントは書かなかったのですが、初めてコメント書きます。
これからもよろしくおねがいします。
二日ほど滞在したことがあります。
当時から少し傾いたままの船室でしたが、沈んだのですか!
クルーの着ていたトレーナーを購入した記憶があります。
駐車場から歩く長い桟橋、
暗い船内を通り抜けた後の明るいキャビンが印象に残っています。
思い出は人それぞれに加工して収納されている様ですから、
それぞれに大切にしておくしかない様です。
unagiさん
こんばんは。
ムソルグスキーの古城いいですね。
初めて聴きました。いつか弾いてみたいと思いました。
文章を読んで、写真を見て、そのうえで聴いたものですから、なおさらぐっときました。
沈まない思い出も素敵です。
タムちゃんさん、こんばんは
いつも見ていただけて嬉しいです。
そしてコメントをありがとうございました。
いろんなところにいろんな人がいて、わすっられないような印象を残してくれることがありますね。
そういう事が一つでも増えたらいいなと思います。
ありがとうございました。
マーニさん、こんばんは
泊まられたんですか?
うらやましいです。
船は今は和歌山県沖の海底にいるみたいです。
当時は曳けば沈むとわかっていてわざとやったんじゃないか・・
なんて考えたりもしましたけれど、そういうことを言っちゃいけないんでしょうね。
たくさんの人の思い出となるなんて素敵な船だったと思います。
ありがとうございました。
さちさん、こんばんは
いつもコメント嬉しいです。
これいい曲ですよね。
古城の手前のプロムナードがまたいいと思います。
いつか弾いてみたいって、
いいですね、
素敵です。
ありがとうございました。
ステラ・ポラリス、本当に懐かしい名前です。
とても素敵な船でした、海側から小さな浮きデッキに
船をつけると乗船券は不要でしたね。
階段を降りてずうーっと下へ船底近く、
通路にはマットレスや古びたモップなどが雑然と・・・。
小さな木製のドアがずらりと並んだフロアは水夫たちのキャビンだったのか、中にはDoctorと書かれたドアも。
お酒も入っていたのでクリスマスのちょっとした探検でした。
はるか昔、職場が近くでしたので船も含めその辺一帯が青春の思い出の地、
みんなそれぞれの思い出があるのですね。
kazさん、こんばんは
あの船をステラポリスと呼ぶのはあの船が好きな人か実際に行った人ですよね。
海側から船で乗り付けるなんてこともできたんですね。
なかなか他の誰も持っていない思い出をお持ちでいいなと思います。
形のあるもので、いつかは亡くなる運命だったとは思いますが、
いろんな人の心の中に存在し続けられるあの船も幸せだと思います。
ありがとうございました。